2023-07-16

【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】頭脳警察「銃を取れ」

【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】
頭脳警察「銃を取れ」


憲武●七夕にパンタが亡くなりまして、七夕に亡くなるなんて、奇しくも永六輔と同じなんですが、二人はまったく接点がありません。という訳で頭脳警察「銃を取れ」。

 

憲武●「銃を取れ」は「頭脳警察1(1972)」「頭脳警察セカンド(1972)」に収録されています。発売禁止になった「頭脳警察1」は、三億円強奪事件の犯人のモンタージュ写真を使った、有名なジャケットです。

天気●ちょっと調べてみると、レコ倫から歌詞にクレームがついたとありますね?

憲武●はい、ファーストは結構過激な歌詞が並んでたと思います。「言い訳なんか要らねえよ」という曲の歌詞の中には「てめえのマ○コに聞いてみな」というフレーズがあり、さもありなんという感じですが、二枚目はなぜ発売禁止だったのか、ちょっと今となってはわかりませんが、これでもか!と「銃を取れ」を収録していたからではないでしょうか。実は頭脳警察を、僕自身は熱心に聴いていた訳じゃなくて、浪人時代つき合ってた彼女がファンで、その頃は解散していて、それぞれソロでやってましたが、つられてといいますか、気を引こうと思ってか、頭脳警察のアルバム聴いてたんです。姑息にも話を合わせる感じですね。

天気●姑息ですねえ。

憲武●はい。姑息です。最初話の中でときどき「パンタさん、パンタさん」と言ってたのを聞いて、勝手にパンダのような風貌を想像してたんですが、まったく違って、いい男でした。彼女は頭脳警察を略して「ズケイ」とも言ってましたね。シュールな名詞の取り合わせ、意味の宙吊りだと思ってたら、フランク・ザッパの曲名「Who Are The Brain Police?」から取られてると知りました。

天気●なるほど、ブレイン・ポリス。漢字四文字でインパクト絶大なバンド名ですよね。聴いたことはなくても、当時から、名前は知っていました。

憲武●頭脳警察と言えば、過激な歌詞、ステージでのパフォーマンス、日劇のオナニー事件も有名で、時代的な風潮もあって、「左翼のアイドル」なんて呼ばれてました。でも、パンタのインタビューとか読むと、パンタが赤軍派上野勝輝の「世界革命戦争宣言」にインスパイアされたのは、思想的にじゃなくて、むしろ感情的に同調したんだとわかります。ロックをどうやっていくか? という葛藤の末に、だと思います。

天気●ロック=反体制。これ、実現・体現できるかどうかは別にして、むかしはいわゆるデフォだった気がしますが、やがてロックもポップスへ溶け込んで、政治臭を嫌う傾向も強まった。かつてのロッカーは、何をするにも「戦い」になってしまう。見物客みたいに呑気な言い方になってしまいますが、時の流れですね。

憲武●そうですね。いまや無味乾燥な、同じような曲ばかりで。パンタがいろいろとやったことは、すべては表現のための言葉、日本語との格闘だったんだと思いました。格闘なしに表現なしです。 


(最終回まで、あと701夜) 

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