ブラジル俳句留学記
〔1〕ブラジル行の飛行機
中矢温
8月1日。今日はいよいよブラジル俳句留学の渡航日である。大学の交換留学制度を利用して、サンパウロ大学のFFLCH(哲学文学人間科学研究科)学部に半年間の留学をする予定である。
空港に向かう電車のなかで思い出したのは、2018年3月の東京外国語大学の合格発表のことである。地方で生まれ育った私のなかに東京への憧れはとかく募っていて、大学進学時の希望は「上京すること」、ただそれだけだった。ただ、学費等の面から国公立大学に行きたかったため、父が見つけてくれた東京外国語大学に後期入試で出願した。「とりあえず話者人口の多い国なら友だちがたくさんできそう」と思い、そして「高校で習う世界史は、西洋の視点に偏りすぎているきらいがあるから、大学では第三世界について学ぼう」と思って、ラテンアメリカ地域スペイン語科に出願した……はずだった。なんと私の合格番号はスペイン語科の隣のポルトガル語科にあった。どうやらオンライン出願の際に間違ってポルトガル語科をクリックしていたようだ。
こうして、ポルトガル語科に「誤って」合格したあの日、私は合格発表の掲示板の前で暫く呆然としたあと、笑いが止まらなかった。どうしようもない自分の注意欠陥を笑いながらも固く誓ったのは、「絶対ブラジルに留学をして、面白い卒業論文を執筆しよう」ということ、そして「いつか大人/おばあちゃんになってこの日を思い出したとき、最高に良かったと思えるように頑張ろう」ということである。こんな業を突如担わされたブラジルが気の毒でならないが、この広い大地なら受け止められるのではないか。
「ミス」とは言ったものの、入学してすぐにこの「ミス」は「運命」だったと思えるようになっていた。例えば大学図書館で細川周平氏の『日系ブラジル移民文学』(みすず書房)全二巻を見つけたとき、例えば同級生たちとリオデジャネイロに一か月間の短期留学をしたとき、例えば佐藤念腹(さとうねんぷく、ブラジル移民で「ホトトギス」同人)の句集の読書会〔*1〕を拙いながらも無事開催できたとき、この読書会の記事を読んでくださった研究者の先生が大学院進学という選択肢を提案くださったとき、進学した大学院で素晴らしい人とテクストの出会いに恵まれたとき……。私は自分とブラジルの間にかけがえのない絆を深めていった。元々好きだった俳句と、大学で出会ったブラジルの二つを切り口にして、面白い研究ができるのではないか。
さて、ブラジルと出会ってから実に約六年の時が経った。ようやく長期留学の目処が立ち、自分との約束を果たすことができそうだ。私の乗るニューヨーク経由ブラジル行きの飛行機は、一時間遅れで離陸するらしい。この六年の時の遅れに、この飛行機で追いつけるだろうか。修士論文の構想は浮かんでは消え、結局まだ白紙である。膨らみすぎた期待が少し恐ろしい。
〔*1〕中矢温「ブラジル移民佐藤念腹読書会レポート」[『週刊俳句』2020年12月20日](2023年8月5日アクセス)
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ポルトガル語版(日本語版と内容は少し違います!翻訳機能等でお楽しみください。ネイティブチェックは間に合いませんでした!)
Eu sou Nodoka NAKAYA, uma estudante do curso de mestrado na universidade de Tóquio. Um de agosto de 2023 é o dia de sair do Japão e ir ao Brasil. Finalmente eu posso estudar e ficar em São Paulo e estudar no FFLCH da USP por seis meses (até fevereiro de 2024). Meu termo acadêmico é literatura; as tarefas, as poetas, e a história sobre haiku (poema curto que tem só três versos) no Brasil.
Eu preciso escrever o papel mestrado para me formar na UT. Ainda não decidi tarefas de haiku para pesquisar no papel. Por exemplo, Tarefas de imigrantes japoneses? Ou tarefas de poetas brasileiros? Eu desejo o encontro com tarefas ou pessoas que me fazem escrever com interesse e com paixão. Felizmente, no Brasil há mais livros e pessoas sobre meu tema do que no Japão.
Primeiro, na casa chique, eu gostaria de solver a problema saúde do fuso horário. No próximo artigo, eu vou escrever o encontro com a dona de casa; com a professora Ana.
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