【句集を読む】
虫めがね効果
しなだしん『魚の栖む森』の一句
西原天気
ぼうふらのはりついてゐる水の裏 しなだしん
水には面(おも)があって表面があるのだから、裏もあるわけです。そこに「はりついてゐる」のは「ぼうふら」(表面にはさしづめアメンボウ)。
厚さのない面の、微細な一点。そこを見つめていると、体長数ミリのぼうふらが、しだいに大きく見えるようになる。俳句には、顕微鏡、とまで行かなくても、虫めがね効果は、じゅうぶんに備わってるということです。
しなだしん『魚の栖む森』2023年9月/角川文化振興財団
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