2024-03-10

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】よしだたくろう「雪」

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
よしだたくろう「雪」


憲武●三月に入って雪の日がありました。東京の雪というと、雪国の雪とはまた違った感慨があります。そういう訳で、よしだたくろう「雪」。


憲武●この曲は「青春の詩(1970)」に収録されています。作詞作曲は、よしだたくろう です。ファーストアルバムですね。デビューの頃は「よしだたくろう」とひらがな表記していたのを、よく覚えてます。誰にでも読めますし、目立ってましたので。いつから漢字の「吉田拓郎」になったのか、ちょっとわかりませんが。よしだたくろうというと、フォークの人って感じなので、このアレンジ、びっくりしました。

天気●フォークソングっぽくはないですね。

憲武●はい、そうなんです。バックは澤田駿吾クインテットかと思われます。フルートとピアノのかけ合いがいいんですね。間奏の部分は、フランス映画を観ているような感覚あります。

天気●フォークソングやロックの人たちじゃなく、ジャズ畑を使った。

憲武●沢田駿吾はジャズ・ギターの人ですね。「GO!GO!SCAT-BOSSA」というアルバム持ってます。よしだたくろうの歌唱は、荒々しいといいますか、太い声が魅力ですが、一転ここでは、たくろうらしからぬソフィストケイトされた歌声になってます。改めて歌のうまさを感じました。

天気●音程は悪いけど、それが味かも。

憲武●うん、うまさというより、味ですかね。歌詞のしょっぱな「雪でした」で始まるのも印象的ですね。ふつう降ってる状態を歌いがちですが、過去の思い出を歌詞にしているところに二重構造が出来て、立体的な世界になってます。

天気●雪の日に見た人のことを歌ってるんですね。歌い出し、憶えてますよ。耳に残るメロディです。

憲武●この時、よしだたくろうは23か24歳でしたが、まだまだ認知度は低く、知る人ぞ知る存在でした。「結婚しようよ」「旅の宿」の大ヒットで、一気にフォークのプリンスと呼ばれる存在になりますが、この頃の広島フォーク村時代の「古い船をいま動かせるのは古い水夫じゃないだろう」はいいです。 「よしだたくろう」という平仮名表記の時代の曲が記憶に残ってます。


(最終回まで、あと671夜)

0 comments: