【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
ハーブ・アルパート「Rise」
憲武●ええと、夕焼がきれいな季節になってきました。西日も強くなってきてると思いますが、僕にとって、西日系のアーティストっているんですね。ハーブ・アルパートで「Rise」。
憲武●この曲はアルバム『Rise』(1979)に収録されています。いやー、西日全開ですね。西日系ってことですけど、4つか5つの頃、離れに叔母が住んでまして、離れといっても四畳半一間なんですが、ビクターの家具調のステレオでよくレコードを聴いてまして、ハーブ・アルパートとかグレン・ミラー、サム・テイラーとかをよく聴いてました。ちょうど西日の入って来る時間帯に、一緒によく聴いていたので、それらの曲は西日と共にあるんですね。
天気●曲名が「Rise」なのに、なんで sunset の話なのかな? と思ったのですが、そういうご幼少の頃の事情なのですね。
憲武●はい。ビートルズを教えてくれた叔母とは違う叔母ですが。で、ですねハーブ・アルパートの「蜜の味」というカバー曲は、なぜか西銀座デパートあたりの景色と共に、思い出します。叔母と母と一緒に銀座へよく行ったからかもしれません。ハーブ・アルパートの「蜜の味」は西日の西銀座デパートですね。
天気●うーん、昭和の都会。首都なかんじです。
憲武●で、「Rise」ですが、ラジオで聴いたのが最初で、頭の中で何回も鳴るので、すぐにシングル盤を買いました。何かのコマーシャルにも使われていたと思います。シングルはアルバムとはヴァージョンが違うんです。まず、3分ちょっとと短いですし、笑い声などが入っていません。シングルではもちろん西日の感じですが、アルバムでは、笑い声が夜会へ出かける雰囲気があって、夕景から夜景へという時間帯の感じですね。
天気●知らない曲なのに耳におぼえがあるのは、そうか、コマーシャルとかで流れてたんですね。
憲武●ウイスキーのTVCMでしたかねえ。ハーブ・アルパートの曲って、深夜放送のテーマ曲とか、どこかで耳馴染みになってるんですね。「Rise」はトランペットの音色はもちろんいいんですが、ベースラインも結構気に入ってます。
天気●ほぼワンノートでシンプルなベース。メロディーがいいかんじで乗りますね。
憲武●この曲、「蜜の味」とも「ビター・スウィート・サンバ」ともまったく雰囲気が違いまして、伸び伸びとしたフレーズが実に心地いいです。西日系の音楽の最高峰でしょう。
(最終回まで、あと663夜)
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