【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
ジェームズ・チャンス「Dish It Out」
天気●6月11日にフランソワーズ・アルディが亡くなり、6月18日にジェームズ・チャンスが亡くなりました。音楽も容姿も何もかも違うっぽい二人、どちらを取り上げようか迷いました。で、フランソワーズ・アルディは、もっとふさわしい季節があるだろうし、ジェームズ・チャンスを。この手の音楽にはあまり触れてこなかったですしね。。
天気●James Chance & The Contortions「Dish It Out」でした。単調で凶暴なリズムに、ジェームズ・チャンスのサックスがフリージャズっぽく絡んで、いま聴くと、当時よりもパワフルに感じます。当時話題のコンピアルバム「No New York」(1978年)からの1曲です。
憲武●坂本龍一が好きなので、よく聴いたアルバムですね。ミーハー。死語ですかね? コントーションズの初期のメンバーに日本人が二人いました。その二人は帰国後フリクションを結成します。そのファーストアルバムを坂本龍一がプロデュースしてるんです。最近アナログ盤が再発されてます。
天気●そうなんですね。「Dish It Out」は、調べてみると「わめきちらす」といった意味らしくて、実際、わめきちらすヴォーカルです。
憲武●このヴォーカルスタイルは、たぶん町田町蔵などにも影響与えてるでしょうね。
天気●「No New York」というアルバムは、ジャンルとしては「ノーウェイヴ」。ニューウェイヴへのカウンターの意味合いがあったらしいのですが、このあたりの史実面・音楽面のよく知らないし、解釈は難しい。ただ、よく聴いたんですよね、当時。自発的というより、一緒にいた知り合いがこのアルバムが好きでやたらしょっちゅうターンテーブルに乗せてた。
憲武●確かに中毒性のあるアルバムです。坂本龍一も「僕にとって最高のロックアルバムです」と絶賛してます。
天気●こういう曲って、とりあえあず、「暑苦しい季節に、こんなに暑苦しい音楽を聴くとも、また一興、くらいの感じで。ちゃんとした人たちから叱られるかもしれないけど。
憲武●6月ですからね。6月は僕にとってはパンク的な気分なんです。
天気●ただ、こういうアート志向、アヴァンギャルド志向が、ポップ音楽から失われた、あるいは希薄になって久しいとも思うわけで、気持ちいい・心地よいだけが音楽じゃないぜ、っていうね。
(最終回まで、あと656夜)
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