2024-07-28

後記+プロフィール 901

後記 ◆ 福田若之


加藤郁乎に《春しぐれ一行の詩はどこで絶つか》という句がありますが、ところで花火というのも、終わりどころのわかりにくい芸術のひとつかもしれません。
 
演劇や映画や音楽を鑑賞していて、しばらくしてから、ああ、あれが終わりだったのか、となることはそれほどない。小説なんかに至っては、残りのページ数や余白の取りかたのおかげで、終わりを見逃すことの方が難しい。
 
そろそろ終わりかな、ああ、あれが最後の一発だったのか――そんなふうに終わるということが、花火というものの独特の余韻につながっている気がします。

逆に考えると、花火それ自体によって、この光と音で今年の花火大会は終わりです、と伝えることは、おそらくとても難しいことなのでしょう。あらかじめ約束された合図のようなものがあれば、もちろん違うのでしょうけれども。


それではまた、次の日曜日にお会いしましょう。

no.901/2024-7-28 profile
 
■中嶋憲武 なかじま・のりたけ
1960年生まれ。「炎環」「豆の木」2013年週俳eブックス「日曜のサンデー」2018年 第四回攝津幸彦記念賞・優秀賞受賞。2019年 第0句集「祝日たちのために(港の人)」山岸由佳とのコラボレーションによるwebサイト「とれもろ」
https://toremoro.sakura.ne.jp

■西原天気 さいばら・てんき
1955年生まれ。句集に『人名句集チャーリーさん』(2005年・私家版)、『けむり』(2011年10月・西田書店)。笠井亞子と『はがきハイク』を不定期刊行。ブログ「俳句的日常」 twitter
 
福田若之 ふくだ・わかゆき
1991年東京生まれ。「群青」、「オルガン」に参加。第1句集、『自生地』(東京四季出版、2017年)にて第6回与謝蕪村賞新人賞受賞。第2句集、『二つ折りにされた二枚の紙と二つの留め金からなる一冊の蝶』(私家版、2017年)。

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