【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
高橋幸宏「Tommorow Never Knows」
憲武●えー、ビートルズのカヴァー特集、第5弾です。高橋幸宏の「Tommorow Never Knows」。
憲武●この曲は1988年のアルバム「EGO」に収録されています。高橋幸宏はYMO時代のソロアルバムで「It's All Too Much」をカヴァーしてますし、その後のソロアルバムでも、「Taxman」「I Need You」「You've Got To Hide Your Love Away」など、カヴァーしてます。YMOとしても「Day Tripper」「All You Need Is Love」「Hello Goodbye」をカヴァーしてます。もともとビートルズに親和性が高かったんですね。ですから1982年頃のアルファレコードのお客様インタビューみたいなペーパーの「YMOのどんなアルバムを希望しますか?」というクエスチョンに「YMO plays the beatles」と書き込んだりもして。
天気●実績の曲数からして多いですね。
憲武●意外に多いんですよね。オリジナルの楽曲(1966年)は、サイケデリックで、当時の言葉で言えば電子音楽、今で言うテクノポップかと思いますが、当時のライブでは演奏不可能な、ひたすらに面白い音を追求している一曲ですね。リンゴ・スターのミニマルなドラム、このドラムは「What You're Doing」のドラムを彷彿とすると思いますが、ミニマルなドラムからしてテクノです。
天気●原曲ではギター音のテープ逆回転がトピックのひとつですが、このカヴァーではそれほど目立たちませんね。ストリングスの響きがメイン。
憲武●はい。高橋幸宏のカヴァーは、ゆったりめのテンポで、タブラがずっと鳴っていたりして、インド風の味付けしてありますね。原曲のテープループによる鳥が鳴くような音響も取り入れてありますし、ヴォーカルに入る前のストリングスも効果的かと思います。なんかこう、ガンジスの流れを前にして「チベット死者の書」を読みたくなってしまう、そんなアレンジです。はっきり言って、非常にいい。
天気●インド音楽のパーカッションやシタールが、とくに後半、大活躍。
憲武●高橋幸宏はジョージ・ハリスンが好きらしくて、カヴァーもジョージ・ハリスンの作品を二曲取り上げてますが、この「Tommorow Never Knows」は、レノン=マッカートニー名義でどちらかと言うとジョン・レノンの曲ですけども、ジョージ性がある曲だと思います。哲学的な詩の内容とインド楽器の使用という点ですね。
天気●はい、ジョージ・ハリスンの曲って言われても納得してしまうような曲ですし、音作りです。
憲武●五回に渡ってビートルズの邦楽カヴァーを取り上げてみました。また機会があったら洋・邦問わず取り上げてみたいと思います。
(最終回まで、あと653夜)
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