【句集を読む】
コーヒーにミルク
蜂谷一人『四神』の一句
西原天気
珈琲に開くミルクや涼新た 蜂谷一人(以下同)
コーヒーに入れるミルク(コーヒーフレッシュ)がポットに入って出てくるか、小分けのポーションで出てくるか。前者を喫茶店と呼び、後者をコーヒーショップと呼ぶ。という区分を、いま思いついたが、あまりアテにならない。
「開く」というのだから、この句のミルクはポーションタイプ。ひと昔前なら、意味が伝わらなかったはずだが、物事は変化する。「おにぎりをほどく」という所作も、コンビニのおにぎり以降で、同様に、ひと昔前なら伝わらない。
ミルクを開くと、コーヒーの表面に白く広がる。この動きも「開く」にふさわしい(ポットから注いだミルクはいったん底に向かって沈む気がする。動きが違う気がするのだ)。
《涼新た》で、コーヒーの美味しさを感じるなら、この《珈琲》はやはりホット。湯気まで感じる読み方をしたい。
句集『四神』から、好きな句を何句か。
正座して胸の高さや扇風機
正座というのだから礼節の必要な訪問か法事だろう。畳の見える句。
ベタベタの七味の瓶や扇風機
同じ扇風機でも、こちらはクーラーのないいわゆる最近流行りの街中華。
よく紙に染みて築地の鰺フライ
リボンから老いてゆくなり夏帽子
蜂谷一人句集『四神』2024年1月/朔出版
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