【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
ミーナ「Eclisse twist」
憲武●先月の18日、アラン・ドロンが亡くなりました。88歳でした.出演作の映画音楽ということでMina「Eclisse twist」です。
憲武●この曲はアルバム発売の先行シングルとして1962年にリリースされました。B面は「Renato」です。ミケランジェロ・アントニオーニ監督の「L'eclisse(日蝕)」(1962年)の主題歌です。邦題は「太陽はひとりぼっち」です。1960年のルネ・クレマン監督「太陽がいっぱい」(1960年)のあたかもシリーズのような売り方ですね。
天気●アラン・ドロンの出世作「太陽がいっぱい」はテレビでもよく放映されていますね。大ヒット作だったみたいですから、そういう邦題を付けたくなりますね。
憲武●二匹目の泥鰌ですか。ミーナというと、わが邦では「月影のナポリ」や日本語バージョンの「砂に消えた涙」などで有名ですね。「月影のナポリ」はザ・ピーナッツ、森山加代子のカバー、「砂に消えた涙」は弘田三枝子のカバーがあります。弘田三枝子は、「Eclisse twist」のB面の「Renato」を「月影のレナート」としてカバーしていて、ミーナより上手いんじゃないかと思います。贔屓でしょうか。最初にこのカバーを聴いてしまったから、印象が強いんですかね。
天気●邦訳歌詞で日本の歌手が歌うことが、この頃はとても多かったように思います。欧米の恋愛映画・青春映画が、日本の若者の青春でもあった時代。
憲武●ちなみに「Eclisse twist」は園まりがカバーしてます。
天気●はい、聞き覚えがあります。ずいぶんゆっくりのテンポですね。園まりよりも、それこそ弘田三枝子ツイストのテンポで唄うほうがいいような。
憲武●映画はですね、高校の頃学校をズル休みしてたまたま見てたテレビの昼間の洋画劇場で見たんです。モニカ・ヴィッティが終始アンニュイな感じで、最後もわりとドローンとした感じで終わります。アラン・ドロンだし、主題歌がツイストなので、恋と車とアクションみたいな内容を想像してたんですが、まったく違いました。楽曲が内容と合ってないような感じもします。それも含めて最初のアントニオーニ・ショックでしたね。
天気●私は、「太陽はひとりぼっち」は観た記憶がない。
憲武●そうでしたか。映画の音楽担当のGiovanni Fuscoのサントラ盤がこちらです。映画の中でも印象的に使われてたと思います。映画の雰囲気もちょっと伝わってきます。
天気●モニカ・ヴィッティという女優さんと当時のクルマが素敵な動画。
憲武●モニカ・ヴィッティはアントニオーニの「情事」「夜」「赤い砂漠」のほかにジョゼフ・ロージーの「唇からナイフ」、ルイス・ブニュエルの「自由の幻想」などに出てます。そのモニカ・ヴィッティは2年前に亡くなり、アラン・ドロンも今年亡くなりましたが、ミーナ・マッツィーニはまだ存命です。84歳。4、5年前までアルバムを発表してました。元気です。
(最終回まで、あと645夜)
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