2024-11-03

【句集を読む】季語の宛先 瀬戸正洋『似非老人と珈琲 薄志弱行』とゆるく付き合う・その6 西原天気

【句集を読む】

季語の宛先
瀬戸正洋似非老人と珈琲 薄志弱行』とゆるく付き合う・その6

西原天気


瀬戸正洋の句には、「がんばってつくった」感がない。そこがいい。

それは例えば、

グルコサミンコンドロイチン余寒かな  瀬戸正洋

デルモンテトマトケチャップこどもの日  同

など、音数たっぷり・字数たっぷりのカタカナ語に季語をくっつけた「だけ」の句にも言えて、そこには、苦労して絞り出した感じもなければ、俳人さんがたまに言う「降りてきた」感じもない。言ってしまえば、安易。

安易がいい。安易、最高。

不真面目と、あえて断じてもいいかもしれない。

不真面目がいい(ただし、不真面目があざとく前面に出てしまうタイプの句ではない。本人が本気なのかそうでないのかわからないところが、瀬戸正洋句の魅力だろう)。不真面目、最高。

もちろん、がんばってつくるのもいいのだけれど(つくる人の勝手だ)、読者たる私は、そういう句を読むと、たびたび息が詰まるし、窮屈を感じる。肩の力ぬいたほうがいいですよ、と言いたくなる句がたくさんある。

ま、それはそれとして、12音かそれに近いカタカナ語や商品名を見つけたら、安易に句にしてみる手はある、それがそのまま瀬戸正洋的に仕上がるかどうかは別にして。

 はつふゆのヘリコバクターピロリかな 10key

あ、それと、カタカナというだけで忌み嫌い、怒り出す人もいるかもしれません。そういう人がいそうな句会には、こういう句をどんどん出すといいです。人生には刺激も必要です。

(つづく)

瀬戸正洋『似非老人と珈琲 薄志弱行』2024年3月/新潮社

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