〔ビール俳句〕
きつね
★FLORA FERMENTATION/Kitsune/Japanese Light Lager/アルコール度数4%
岸田祐子
部屋の3カ所に本を積んでいるエリアがあって、そのうちの一つが何度目かの雪崩を起こした。そろそろ本棚が欲しい、それよりもう少し広い家に引っ越しできたら、などと思いながら片づける。その途中で、勝手に開いていた句集のページに、「中学のビールパーティ」という言葉を見つけた。
中学のビールパーティ君行くか 後藤比奈夫
「中学のビールパーティ」って、どんなパーティだろう。「中学校の同窓会のビールパーティ」とか「中学校の教師限定ビールパーティ」などいくつか考えられるけど、それにしても大胆すぎる省略。いろいろと考えてみた結果、「中学の同級生が作ったブルワリーのビールパーティ」に決めた。長くて説明的だけど、これなら、下五の「君行くか」も同級生を誘う言葉として自然だし、ただの「パーティ」ではなく「ビールパーティ」と限定していることも納得できる。そして、「ビールしか飲まない、飲ませない」という決意まで見えてくる。
日本のクラフトビールの始まりは、1994年の酒税法改正でビールの最低製造数量基準が2000kl から 60kl になったことによると聞く。少量からの醸造が可能になって、地域密着・小規模醸造のビール会社が参入しやすくなったということのようだ。きちんと調べたわけではないが、日本では、コロナ禍以降、ますます新しいブルワリーが増えて、酒屋を覗くたび、ビアパブに入るたびに、新しいブルワリーとの出会いがある。ブルワリーごとに特色はあるが、大抵の場合、どこのビールも全部美味しい。だから、どのブルワリーのビールパーティにだって喜んで参加したい。ただ、一つだけ選ぶとしたら、今の私は FLORA FERMENTATION のビールパーティに行ってみたい。
FLORA FERMENTATION は滋賀県で出会った醸造家3名が設立したブルワリー。地ビールレストランのアルバイトで出会った3人は、いつか自分たちのブルワリーを立ち上げたいと語り合い、それぞれに留学やブルワリーでの修行を経て、FLORA FERMENTATION を立ち上げた。私が初めて飲んだフローラのビールは Kitsune(キツネ)という名前で、お米を使ったもの。透き通った綺麗な味は、ポップコーンみたいに香ばしく、明るく軽く楽しいラガーだ。
笹塚のビアバーPINTOLOGYにて、タヌキ絵柄のグラスで飲んだKitsune
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