【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
ポール・マッカートニー「Momma Miss America」
憲武●6月といえばポール・マッカートニーの誕生月として広く記憶されています。今月の18日で83歳になりますね。という訳でPaul McCartney「Momma Miss America」。
憲武●この曲はアルバム『McCartney』(1970)に収録されています。初めてのソロアルバムで、宅録の先駆的作品です。楽器は全部、ポール一人でやっています。「Rock'n'roll spring time, take one」という掛け声と共に始まるのが印象的です。ラジオ番組のテーマ曲として使用されていたこともあるので、知ってる人もいるかもしれませんね。
天気●このアルバム、聴いたことがないんです。この曲も初めて聴きました。
憲武●そうなんですか。この曲はビートルズのよくやっていたメドレー形式の作品、古くは「Kansas City」でしょうか、で、1分57秒あたりで雰囲気がガラッと変わります。
天気●いわゆるメドレー、既存曲をつなげるのではなく、曲調が変わる、違う要素へと移るという意味ですね。これ、前半のマイナーコード中心から、後半、メイジャーコード中心の展開に変わるので、二部構成みたいな感じですね。
憲武●そうですね。この「McCartney」というアルバムは、インストゥルメンタルが多めですが、その中でも緊張感のある曲に仕上がっています。
天気●当時、ちょっと不思議です。ビートルズ=ヴォーカル・グループというアタマがありますから、インスト、なにか狙いがあったのでしょうか。、
憲武●ブライアン・エプスタインがマネジメントするようになってから、すっかりヴォーカル・グループとなりましたが、ハンブルクの頃は結構インストもやっていました。そういったノリでやってるんじゃないでしょうか。ポールのベースライン、面白いですね。同じパターンを弾いているようで、ところどころでちょこっと変えたりしてる。同じパターンに戻って来るのかと思っていると、戻らなかったりと意表を突いて遊んでる感じがいいです。
天気●シンプルでよくあるパターン。変えてるといっても、16分音符の数がひとつ増えるとか、ほんの小さな変化ですが、よく気づきますね。ただ、全体のハーモニー(コード)との関係で、あれれ? 凝ってる? という箇所があります。時間をかけて聴かないと私には無理なので、分析はあきらめますが。
憲武●今月の7日にリヴァプールでのブルース・スプリングスティーンの公演に、サプライズ出演して人々を沸かせました。「キャント・バイ・ミー・ラブ」を歌いましたが、82歳とは思えません。
天気●映画『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』(A Hard Day's Night)でかかるこの曲、すごく好きでした。
憲武●ポール自身も気に入っているのか、ライブではよく歌います。82歳といえば、9日に亡くなったスライ・ストーン、11日に亡くなったブライアン・ウィルソンも同い年、あ、スライ・ストーンは1943年3月生まれなので学年が一緒ということか、ですが、ポール・マッカートニーはあと20年くらい大丈夫そうですね。
(最終回まで、あと607夜)
0 comments:
コメントを投稿