【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
ピーター「人間狩り」
憲武●思春期の頃に聴いた曲って、わりとよく思い出したりするんです。この曲は当時の私には刺激が強すぎました。ピーター「人間狩り」。
憲武●この曲は作詞なかにし礼、作編曲馬飼野康二、1974年リリースです。中学生だったんですが、テスト前の勉強してて朝方うとうとしかけた頃、ラジオから突然流れて衝撃を受けた記憶あります。曲の冒頭の低い声が怖かったのです。
天気●たしかに、おどろおどろしい。
憲武●はい。「で~か~け~よ~お~」のところとか「低っ!」って感じです。コーラスが「ピー、ター、ピー、ター」と歌っててアイドルっぽいなと思っていたら、コーラスが「マンハント、マンハント」と歌っていることが最近になってわかりました。
天気●ほんとだ。聴こえる。私の耳には、ペー、ター、ペー、ター。
憲武●そもそも「人間狩り」というタイトルがインパクトありますし、詞の内容に比して少しおかしげな部分もあり、「愛なんかなくていい/たった一晩だけでいい」ですから、これは思春期の少年には刺さりますね。最初あやしげな雰囲気で始まり、途中突然アップテンポになりドラマティックです。
天気●サビでノリノリになるのですね。にんげんがり♪ にんげんがり♪ 歌詞の内容とは裏腹に、なんだか、ウキウキ。男の子が昆虫採集に出かけるかんじ。
憲武●ピーターは「池畑慎之介☆」という芸名で近年活動していて、これは本名なんですね。
天気●「☆」は? 付いてるのと付いてないのと、どっちもあるようですが。ともかく、いま73歳? かっこいいおばあちゃん、という感じです。
憲武●「☆」は本当は五芒星らしいです。上方の日本舞踊の名門に生まれて、高校生のとき、二度めの家出で六本木へ出てきました。「六本木のピーター」と親たちが呼んでいたのをうっすら覚えてます。
天気●いまさらですが、「生物学的性」からの自由度が高いんですよね、日本は、文化的に、歴史的に。同性婚なんて、とっくに認められていておかしくない。
憲武●本当ですよ。この曲は近田春夫などのカヴァーもありますが、本人歌唱の方が声の魅力もあって、表現が深まってると思います。怪曲と呼んでいいでしょう。
天気●怪曲。まさに。
(最終回まで、あと603夜)
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