2025-07-13

岸田祐子〔ビール俳句〕血のトマト

〔ビール俳句〕
血のトマト
★のぼりべつ地ビール鬼伝説/シシリアンルージュ/フルーツビール/アルコール度数6.5%

岸田祐子


歓楽の口真つ赤くてビール飲む 飯田蛇笏

「口真つ赤くて」のインパクトが強くて、ヴァンパイアが浮かんだ。ヴァンパイアは、不死の存在で、血を吸って栄養とする吸血鬼。私にとってのヴァンパイアは、萩尾望都の『ポーの一族』なので、この句でビールを飲む人(?)は、永遠の時間を生きる少年、エドガー・ポーツネルだ。

エドガーは、人間の血も吸うけれど、血が手に入らない時は薔薇のスープや薔薇のエッセンスを入れたお茶から栄養を取る。また、人間の世界で、人間に擬態(?)しながら生きているので、日中も活動する。ずいぶん昔に読んだので、はっきりとは覚えていないのだけど、擬態している以上、人間の食事をとることもあるだろう。

ドイツにあるガブリエル・スイス・ギムナジウム(高等学校)4年のクラスにイギリスから二人の転校生がやって来る。エドガーとアランだ。エドガーとアランは二人ともヴァンバイアなのだけど、普通の少年のようなふりをして生徒たちの中に紛れ込む、というのがポーの一族シリーズの中の「小鳥の巣」のストーリー。この作品の中でなら、エドガーとアランが歓楽街に出かけてビールを飲むエピソードをなんとかねじ込める。

五月祭(学園祭)の準備の買い出しで街に出かけた二人は、ヴァンパイアだということがバレそうになる。追手を巻くため、人に紛れてパブに入って、その際に飲むのが、鬼伝説のシシリアンルージュ。イギリスから転校してドイツに来た二人が、なぜ、北海道のブルワリーで作られたシシリアンルージュを飲むのか? ということは気にしないでいただきたい。

ポーの一族では、エドガーたちヴァンパイアが特にトマトを好むということはない。けれど、藤子不二雄の『怪物くん』に登場するドラキュラは、血の代用としてトマトジュースを飲む。だから、エドガーとアランにもまずはトマト味のビールをお勧めする。このビール、飲んだとたんにトマトがきて、それからふーっとバジルが香る。ほんの少し塩味もして、スープのような一杯だ。


≫地ビール「鬼伝説」ウェブサイト

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