2025-08-03

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】サザンオールスターズ「東京サリーちゃん」

【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
サザンオールスターズ「東京サリーちゃん」


憲武●CDショップの店頭などで、よく見かけた「夏だ!サザンだ!山達だ!」というポップ広告がありました。という訳で今回はそのサザン。サザンオールスターズで「東京サリーちゃん」。

 

憲武●はい。ジョン・レノンですね。これは。ビートルズの後期、「アイ・アム・ザ・ウォルラス」「カム・トゥゲザー」「アイ・ウォント・ユー」といった雰囲気です。

天気●音とか曲調がダーク(?)な感じが、そのあたりの曲を連想させますね。

憲武●はい。そしてベースの入り方が、まるでポール・マッカートニーなんです。

天気●ジョン・レノンじゃなくて、Lenny Kravitz「I Build This Garden For Us」を引用元に指摘する記事もあって、なんと、この曲も、ベースは、ポール・マッカートニーっぽいんですよね。

憲武●そうですね。サザンオールスターズというと、リトル・フィートって感じだったんですが、この曲を聴いて、ビートルズもあると思いました。

天気●リトル・フィートは、思ったことがないですが、ともかく、サザンというのは「洋楽」の雰囲気をうまく日本に移入したバンドだなあ、と。

憲武●それは感じますね。まあ、もっとも僕の場合、ファーストアルバムから3枚目までは買って聴いてましたが、そこで聴かなくなって、ある日ふとこの曲の入っている「稲村ジェーン」を買ったんです。ですから4枚目から9枚目、それ以降のアルバムには、ビートルズを感じさせる曲もあるかもしれません。

天気●いっぱいアルバムがありますからね。そのときどきでエッセンスが違うようです。

憲武●歌詞に、なんかこう、惹かれるものがあります。例えば、ボウリング・シャツのジャイアント・マン、理由(わけ)ありな守備、きみは雀荘カナリー、夏は静かに涼は平凡ってところ、意味からは解放されていて、意味の宙吊り状態です。こういった歌詞が、徹頭徹尾並んでます。こういったところも、ジョン・レノン的なセンスだと思います。

天気●「アイ・アム・ザ・ウォルラス」的な?

憲武●とか「カム・トゥゲザー」のジョン・レノンのinsane的な部分の出てるような楽曲でしょうか。このアルバムは、桑田佳祐の初監督作品「稲村ジェーン」のサウンドトラックという体裁ですが、この「東京サリーちゃん」は映画では使用されてなくて、パーソネルもサザンオールスターズ以外の人が演奏してます。最初聴いた時、サザンオールスターズの音ではないような気がしたんですが、そういうことでしたんですね。

天気●湿り気がね。この曲はじっとりしている。

憲武●サザンオールスターズというと、ナマで一度だけステージを見ています。デビューの翌年の3月にFM東京の「小室等の音楽夜話」の公開録音が日本武道館でありまして、抽選に当たって見に行ったんです。その時の目当ては井上陽水でしたんですが、サザンオールスターズも出演していて、「勝手にシンドバッド」「いとしのエリー」など数曲披露したんですが、なんかこう、親近感が湧きました。

天気●むかしむかし、デビュー前の「勝手にシンドバッド」とかのデモテープだったかを知人経由で聞く機会があって、新鮮でしたよ。そしてなにより、愉しくバンド演奏してる、バンドで勝負してるなあ、という感じでした。

憲武●そうです、その愉しい感じがいいです。あと3年でデビュー50周年の節目です。あと一度くらいステージを観たいと思う、今日この頃です。 

(最終回まで、あと601夜)

1 comments:

trako さんのコメント...

えっとですね。
『ロックの子』によれば、
最初の音楽的記憶はフランク永井やペギー葉山。
そして多大な影響を受けたのが「シャボン玉ホリデー」(洋楽がたくさん紹介されましたね)。
そしてGS、ビートルズ、クールファイブと(笑)……と続くと。
桑田佳祐のご両親は水商売をやられていて(バーとか喫茶店)あまり親にかまってもらえない幼少期だったらしい。
そこに君臨していたのが四つ違いのお姉さん。
あの「ビートポップス」でゴーゴーを踊っていたという、そうとうスパイシー&アグレッシブな女性で、大大大のビートルズ狂(「推し」じゃあ手ぬるいので)。なんでもビートルズ来日の際、学校から「ビートルズ禁止令」が出たら、プラカード(!)を持って職員室に抗議に行ったというくらい……その姉キからの影響は相当大きかったと思います。