【中嶋憲武×西原天気の音楽千夜一夜】
ディー・ディー・シャープ「マッシュ・ポテト・タイム」
憲武●12月というとですね、僕の場合、こうっとまあビートルズ出現以前の米国北東部ソウルなどを聴きたい気分になることがあります。という訳でディー・ディー・シャープ「マッシュ・ポテト・タイム」。
憲武●ディー・ディー・シャープはフィラデルフィア出身の人で、この曲は1962年にカメオ・レコードよりリリースされ、大ヒットしました。
天気●調べてみると、この人、ケニー・ギャンブルと結婚していた時期があって、あの、ギャンブル&ハフ、フィラデルフィア・ソウルでやたら目にするソングライター・コンビの一人です。
憲武●あっ、そうなんですね。えーとマッシュ・ポテトというのは、ここではツイストのようなダンスのことですね。弘田三枝子の「ヴァケイション」で「(中嶋、椅子に立ち上がりマイクを持つ格好をし歌い出す) ♪マアーッシュポテトを みぃずべ(水辺)でぇー あぁーのひぃーとと(あの人と)うぉどーろぉー(踊ろう)」(歌い終って、椅子から下りる) 「♪うぉどぉーろうー」ですよ。
天気●ちょっと落ち着きましょうか?
憲武●あ、すみません。ちょっと興奮しちゃって。弘田三枝子、幼児期によく聴いてたんですけど、この「マッシュポテト」というのがよくわからなくて、普通、食べ物じゃないですか、それが「踊ろう」?
なんのこっちゃつー感じで。
天気●まあ、わけ、わかんないですよね。
憲武●マッシュポテトがようやくわかったのは、30代に入ってからですね。然し乍らジャガイモを擦り潰すような感じのダンスと言われても、動きがよくわかってなかったです。すなわち踊れない。
天気●うねうねするんですかね? ぐちゃぐちゃとか? なんにせよ難しい。
憲武●うねうね、でしょうかね。ツイスト系ですから。ところでこの曲、聴いたことのあるような曲ですよね。「プリーズ・ミスター・ポストマン」に似てますね。ちょっと聴いてみますか。マーヴェレッツの「プリーズ・ミスター・ポストマン」の大ヒットが1961年なので、後を追うように作られたんでしょうね。似てます。コーラスも。
天気●似ていますね。コード進行が同じ(Ⅰ→Ⅵm→Ⅳ→Ⅴ)です。というか、この「マッシュ・ポテト・タイム」。「the day they did it to Please Mr. Postman♪」って歌詞があるので、あきらかにオマージュというか、本歌取りですね。
憲武●そうなんです。「wait a minute, wait a minute」とも歌ってますし。あとね「ライオンは寝ている」という歌詞もあるんです。それで面白いことに、マーヴェレッツは「マッシュ・ポテト・タイム」をカヴァーしてるんです。今なら訴訟騒ぎになると思います。でも当時はお互い認め合っていたような感じがします。大ヒットしてますから、聴く方も「パクり」という考えがなかったんでしょうね。因みにロネッツも「マッシュ・ポテト・タイム」をカヴァーしています。
天気●声が変わるだけで、曲全体の印象はさほど変わりませんね。このあたりはぐちゃっとひとかたまりにヒット曲、ポピュラーな曲をファンに披露している感じです。
憲武●12月というと昔からパーティーな気分になったりしますが、本日ご紹介したのは、そうした気分にマッチするような楽曲群だと個人的には思っています。
(最終回まで、あと581夜)
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