【句集を読む】
雪降る街
竹岡佐緒理『帰る場所』の一句
西原天気
旅したし雪降る街に眠りたし 竹岡佐緒理
旅先も雪も街も、そこにはなく、思いのなかです。だから、季題原理主義者はこの句を有季と認めないかもしれません。でも、そんなことはどうでもよくて、眠っている作者/作中主体(ああ、めんどう。どっちの主体でもいいや)を、蒲団が包み、旅館の屋根が包み、街が包み、夜空が包む。
これは、誰でも「たい」と思う。げんに、あすにでもどこかに行きたくなってしまった。
なにげなく「街に眠る」とのフレーズが心にしみる。
なお、この句は、「Ⅳ 暮らし」の章の最後の句。次のページから「Ⅴ 旅」が始まる、という気の利いた構成もうれしい。
同句集からほかに何句か気ままに。
マフラーを背中に垂らし立ち飲み屋 竹岡佐緒理(以下同)
純喫茶跡地ぽつかり冬の空
観た映画ばかり観ている三日かな
パイナップル海しか無いが海がある
東京に文学ありぬ鶏頭花
竹岡佐緒理句集『帰る場所』2025年1月/ふらんす堂
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