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2016-08-14

【句集を読む】140億年の壮大スケールで描く俳諧的ちまちま世界 マイマイ『宇宙開闢以降』 西原天気

【句集を読む】
140億年の壮大スケールで描く俳諧的ちまちま世界
マイマイ宇宙開闢以降

西原天気


小ぶりの正方形(134mm✕134mm)、本文36頁。この小ささ・薄さが、高い企画性(ひとつのテーマ・いっぽんのストーリー)とよくマッチした句集。言い方を換えれば、えんえん分厚いページ数でやられても困る。そのへんのこと、すなわち読者の腹具合がよく考えられた句集。

(気遣い・心配りは「本のかたち」以外でも随所に見られるのです。そのへん追い追い)

最初のページはプロローグ。「カウントダウン321…」で次のページへ。

インフレーション宇宙一様に淑気  マイマイ

インフレーションで切るのではない。「インフレーション宇宙」。耳慣れないが、だいじょうぶ、脚注(6ポイント、ちっちゃい!)で用語解説がある。

(句集に脚注はそぐわないとおっしゃる方もいそうだが、科学用語の解説に限られているので、違和感がない。俳句はやっぱり「文系」なのだ。「理系」の知識はこうしたかたちで「与えて」もらったほうがいい)

この句集、宇宙誕生から人類誕生あたりまでを俳句で追う趣向。その処理法は、上に掲げた句でもわかるように、きわめて俳句的。宇宙科学的なネタと有季定型の出会い、ってな感じ。

フィクションの質(どの程度、どの方向に虚構的か)に幅がある点も、たぶんになりゆき的ではあろうけれど、美点。

色薄くなる風船の膨らめば  同

は「膨張する宇宙」とからめなくても、風船の(軽妙な)描写として読める。このあたりが虚構度〔低〕。

宇宙背景輻射(おうしゃ)布団を出られない  同

は虚構度〔中〕程度か。

三葉虫石の瞳のみる虹よ  同

は虚構度〔高〕のファンタジー。

さらには、

亀鳴くや大地支ふる大亀も  同

古代インドのコスモロジーにも範囲が及ぶ。

企画モノという言い方はしばしば低評価と結びつく(テレビ番組等のカジュアルな例)。じっさい余興的に終わることも多いが(それでもいいと思うんだけどね、私は)、この『宇宙開闢以降』は、作者が句を楽しんでいるという作者内部の動因と、読者に親切であろうとする作者外部への意思がうまくバランスされて、結果、「おもしろい」というエンターテインメント究極の成果をもたらしている(というと、大げさか。とにかく、おもしろく終えられるのです。100分程度の長すぎない娯楽映画のように)。



マイマイ句集『宇宙開闢以降』(2016年8月/マルコボ.コム)
≫オンラインショップ

2015-05-03

【週俳4月の俳句を読む】マイマイ ネヂ

【週俳4月の俳句を読む】
ネヂ

マイマイ


4月の俳句楽しく拝読致しました。

田楽の跡の皿掻く串の先  阪西敦子

まるで鉛筆で描いた静物画のようだ。素材もありふれているし、特別に難しい言葉を使っているわけでもないが、実体をストイックに写しとっている。「届いて」はこのような写生句あり実から虚へ分け入っていくような句もあって読み応えがあった。


街ぢゆうにネヂ軋ませて家具の恋  西原天気

「戦争」は一句のなかに少しずつ何かが盛ってあるようで飽きさせない作りになっている。掲句は「○○の恋」という春の季語をもじってあって、家具がみしみし音をたてて別の家具を口説いたりする場面を想像して楽しかった。マニアな楽しみとでも言おうか。



第415号2015年4月5日
北大路翼 花の記憶 12句 ≫読む
 
外山一機 捜龍譚 純情編 10句 ≫読む 
阪西敦子 届いて 10句 ≫読む
第416号 2015年4月12日
西原天気 戦 争 10句 ≫読む

2013-07-07

マイマイ ハッピーアイスクリーム 10句

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週刊俳句 第324号 2013-7-7
マイマイ ハッピーアイスクリーム
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10句作品テキスト マイマイ ハッピーアイスクリーム

ハッピーアイスクリーム  マイマイ

夕薄暑突き出す腕のトロンボーン
梔子の咲くは神籤を結ぶごと
梅雨晴間自画像作家として自立
ベランダのパセリの花といえば花
夏至の夜のカスタネットの音乾く
兼八と佐藤の麦を並べ呑む
一掃せよダチュラが叫びだす前に
ビアテイスト飲料という境地かな
ハッピーアイスクリームハッピーアイスクリームハッピーアイスクリン
夏野さまようカザルスの鳥の歌


2011-10-30

2011落選展 マイマイ 冬日なし

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週刊俳句第236号2011-10-30

2011落選展 マイマイ 冬日なし

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2011落選展テキスト マイマイ 冬日なし

冬日なし   マイマイ

入梅の重さを移す車椅子
しばらくはふたり河鹿を聞き分ける
抑留体験記梅の実が濡れてゐる
羽黒蜻蛉は羽黒蜻蛉に夢中です
延命の管の向こうの夏の雲
百合開くまでタンバリン鳴らさうか
夏蝶の空の真昼へ落ちてゆく
夕焼に染まない雲がありました
水の惑星(ほし)我に極暑のカレーパン
生きるてふ刑期や蝉の声止まず
半月の沈む重さやダチュラ咲く
遠慮なく父のおごりの鰻食ふ
むくげ見たむくげ落ちてゐるのも見た
雨さつと過ぎてかなかな遠く近く
椋鳥の群のぐにゆぐにゆぐにゆ磁力
ジェットコースターの運ぶ心臓秋高し
芋虫をですます調で問ひ質す
秋空はビルの硝子かもしれず
ポケットにきのふのどんぐりが乾く
無駄な抵抗を止めて蟋蟀を聴け
ちやんぽんのもやしのひげの夜長かな
遅番や金木犀の荒(すさ)ぶ街
新聞のペラペラ乾く百舌日和
遺品詰め込む小春日の段ボール
石蕗咲いて岬に鉄の匂ひけり
贈答の箱をまだ出ぬ毛布かな
風に当たらぬ山茶花から咲いた
四階フロアー一周報告冬日なし
風花やカップに混ぜるとろみ剤
地下街の泉に揺らぐクリスマス
オムツ交換三十一床冬銀河
新年を実直さうに来る額
雪嶺や少女のごとく歌はんか
人死ぬる日の水仙のむせかへる
入れ歯洗浄剤シュワシュワ寒明ける
青空や風のミモザの真下まで
白木蓮(はくれん)の約束ならば破られる
エイプリルフールみな上を向く粉薬
春風の類型として電車過ぐ
引き抜くべきスミレと目があつている
ボーロください百六歳の春の日に
花屑を踏んでらいおんバスが来る
行く春の行列サーカスの冥さへ
人待てば藤の名残をつたふ雨
目測を小さく裏切る蛍の灯
洗はれて五月の山の近さかな
夏蜜柑剥く唐突に正義感
初夏の太陽、海は多面体
青嵐剥がれし爪の下に爪
桐の花降るローマ史の伏せしまま