2007-11-04

ひらの こぼ 俳句のちから

〔週俳10月の俳句を読む〕
ひらの こぼ 俳句のちから



熱 気 球 音 な く 流 れ 蕎 麦 の 花    齋藤朝比古

なんだか作者の澄んだ視線がすべてに感じられて、まとまりのある10句。どの句にも好感を持ちました。やさしい気持にさせてくれる。俳句の力って大きい。そんな思いにさせてくれる作品です。

風に流されている熱気球。晴れ渡った空。そして一面の真っ白な蕎麦の花……。「なんでも受け入れる」そんな気分に溢れた句。視座がしっかりした俳句はやはりいいですね。それは、あとの10句にも通底していると思いました。


満 月 は 水 夫 の 匂 ひ さ せ て 歩 く     振り子

蕪村の「御手討の夫婦なりしを更衣」の句からは短編小説が書ける。同じようにこの句のなかの言葉を紡いでいけば、数十行の現代詩の一篇になりそうです。

たとえば「水夫の匂ひ」を軸にすればどんな内容の詩が展開できるか。そんな楽しみ方もできる句だと思いました。読者を選ぶ句かもしれませんが、こういう方向はあるなあと……。といってじゃあ鑑賞してみろと言われても実は困るのですが。


少 年 の 歯 型 盗 ま る 桃 の 寺 院  大畑 等

俳句ならではの物語性。やはり俳句は詠み手と読み手の共同制作物だと思わせてくれます。少年の歯型のついた桃を盗んだのは誰か。では、なんのために。そしてそのあと少年になにが起こるのか。サスペンスです。いや、面白いです。


上 七 軒 昼 顔 昼 の か ほ を し て   柿本多映

京都は北野天満宮あたりにある花街。お昼に普段着の芸妓さんや舞妓さんがちょっと用事にといったシーンを思い浮かべます。

昼顔は夕方には萎みますが、それから先はさてどんな花になるのやらなどと気にもなります。上七軒あたりの風情なども昼顔にぴったりだと思いました。


げ ん こ つ で ほ ぐ す 足 裏 蓼 の 花   津川絵理子

山歩きなどでの1シーンでしょうか。香辛料としても使われる蓼と凝りほぐしがなんとなくつながるようなところも面白いです。

角川俳句賞受賞、おめでとうございます。



齋藤朝比古「新しき夜」10句  →読む振り子「遺 品」10句 →読む五十嵐秀彦 「魂の鱗」 10句 →読む大畑 等 「ねじ式(マリア頌)」10句 →読む岩淵喜代子 「迢空忌」10句 →読む柿本多映 「いつより」10句 →読む津川絵理子 「ねぐら」10句 →読む

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