〔週俳5月の俳句を読む〕
岡本飛び地
水族館にふくろうが
青葉木菟去りたる枝の余りたる しなだしん
地元の水族館にふくろうがいた。お手伝いをしていた関係で、その水族館にはよく出入りしていた。その度にふくろうの展示のところで足を止めた。夏休みには毎日のように足を運んだ。その度にふくろうを眺めた。真っ黒な目がくりっとして、体はもこっとして、ときどき小首を傾げて、かわいかった。今年の春、何年か振りにその水族館に行った。もうふくろうはいなかった。余っていた。
しゃぼん玉のよくでる家のありにけり こしのゆみこ
しゃぼん玉のよくでる家はきっと
小さい子供のいる家。親子の仲がいい家。
通りに面した家。
朝には元気な「いってきまーす」が聞こえる家。
冬の夕方にはシチューの匂いがする家。
百年の恋は椿を踏んでから 渡部州麻子
椿を踏んだその瞬間が、百年の恋の始まり。
足元の椿から、匂いがわっと広がるように、百年の未来が予感できるならば、椿を踏んでみようと思う。
来春にでも。
縄文のことばのかけら山ざくら 加根兼光
例えばタイムスリップができたとしたら。縄文時代に行ったとしたら。縄文人のみなさんと私たちとでは、言葉が変わりすぎて通じないかもしれない。「どこからきたの?」も「お腹空いた」も通じないかもしれない。それでも、一緒に散歩していたら、山桜が咲いていたりして、それを見て、みんなで笑顔になれるかもしれない。
例えばタイムスリップができなかったとしたら。縄文人の誰かが山桜に何か願いを込めていたとしたら。その願いはほんの少しでも、私たちに届くかもしれない。山桜を見る度に。
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2009-06-14
〔週俳5月の俳句を読む〕岡本飛び地 水族館にふくろうが
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