林田紀音夫全句集拾読 231
野口 裕
夜桜の夜は凄まじく桜色
夜のさくら雨のさくら枝揺れる
さくら散るたすうがひとつづつ減って
びっしりと夜空を貼って散るさくら
昭和五十八年、未発表句。桜が連続して四句。紀音夫は、毎年桜(あるいはさくら)の句を作っている。背景は夜が多い。無季作家の根幹にある有季定型と見ることも可能だろう。
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石垣に日あたる石と影の石
昭和五十八年、未発表句。突き出ている石に日があたり、引っ込んだ石が影になる。当然、影の石に作家の目は注がれている。
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昼過ぎの筍皮を脱ぎたがる
昭和五十八年、未発表句。朝は、きっちりと身を包んでいた筍の表皮がだらしなく垂れかかっているのだろう。奇妙にユーモラス。
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水際のひとりの刻の夕茜
はるばると夜空を仰ぐこころの喪
月光にひっそりと訃を受けとめる
昭和五十八年、未発表句。一句目に「悼 重信」の詞書。三句連続の悼句と見てよい。だが、高柳重信と林田紀音夫はあまりクロスしなかったのだろう、句を重ねている割には力を入れているように見えない。
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2012-09-16
林田紀音夫全句集拾読231 野口裕
Posted by wh at 0:04
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