林田紀音夫全句集拾読 247
野口 裕
芒野の昼のきらめき破片の壜
昭和六十一年、未発表句。壊れた硝子瓶が芒野に光って見えるだけの景。視界に捉えたきらめきが、うれしい不意打ちだったか。
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雨傘の浮力伴なう朝の坂
昭和六十一年、未発表句。雨の中を出勤の途上、風の向きでいつもは難儀な上り坂が楽になったか。「浮力」が諧謔味ある表現。日常生活の中のちょっとした愉悦を書く無季の句。紀音夫としては希少価値あり。
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冬が来ている紙飛行機を放す
昭和六十一年、未発表句。凧揚げの連想からか、紙飛行機でもゴム動力の飛行機でも冬によく飛ばしたような印象がある。風に乗りやすいせいかもしれない。すでに定年を過ぎた作者が飛ばす紙飛行機の行き先は、過去の思い出か。
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雨の日の仮泊にも似てオルゴール
昭和六十一年、未発表句。第二句集に、「父に幼女のオルゴール泣く水の夜」もあるが、オルゴールは珍しく、「仮泊」なる語はさらに珍しい。仏教語めいて響くが、辞書には、艦船が港や沖合に仮に停泊することとある。徴兵されて華北に渡った前後を回想しているのか。
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2013-01-06
林田紀音夫全句集拾読 247 野口 裕
Posted by wh at 0:02
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2 comments:
10keyさんがお忙しいのがようやくわかりました。「週刊俳句」毎日更新というお仕事があるからですね。頑張って下さい。これからは時々覗かせていただきます。
匿名さん、こんばんは。
いえ、4人でやっているので、当番が回ってくるのは月に1回だけです。
今夜がその当番で、ちょっとがんばりました。
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