【週俳3月の俳句を読む】
3月の俳句は水つながり
小久保佳世子
週俳3月の俳句、作者5名の10句には偶々水を詠んだ句があり、別々の味わいながら詠まれた水の世界は春ならではのものだった。
花屋より流れ出でくる春の水 大穂照久
水道水に違いないが、「春の水」と断定されると花屋の花たちは一気に作られた人工から天然のいきいきとした春の色を纏うようだ。
水音は風の足音春キャベツ 黒岩徳将
この足音は気配というより、もっと具体的な音を感じる。水のなかにも風の音があり、それはモノが残してゆく足音としてくっきり認識された。春キャベツの斡旋に変なリアリティがある。
水に傷つけて初蝶淫らなる 新延 拳
傷、淫ら、蝶、これらは類似語かもしれない。
麗らかや水に飛び込みさうな松 中田尚子
不安定を孕みつつ、世は麗らかにこともなし。
おぼろおぼろ我をつつみてゐし胞衣も 杉山久子
私たちは産声を挙げるまで膜に包まれながら水に浮かんでいた。ふっとそんなことを実感するのはしっとりした朧夜ゆえだろうか。
■新延 拳 我を呼ぶこゑ 10句 ≫読む
■中田尚子 風車 10句 ≫読む
■杉山久子 明日蒔く種 10句 ≫読む
■黒岩徳将 切符 10句 ≫読む
■大穂照久 叙景 10句 ≫読む
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