後記 ● 福田若之
まず最初に、おせっかいをひとつだけ。
もし、23日が24日になって間もないこの時間帯に、このページを開いている俳句甲子園の選手がいたら、すぐに、ただちに、可及的速やかに、睡眠に入ることを勧めます。
今夜は、ほら、しっかり寝ましょうよ。明日(というかもう今日だけど)も、なにが起こるかわからないから。いつでも全力で楽しめるように。
おやすみなさい。
●
さて、今回の「柳×俳」特集、いかかだったでしょうか。
個人的には、やはり、どこまでが川柳でどこまでが俳句かという境界線を問うよりは、川柳らしさとは何であって俳句らしさとは何であるのかを問うほうが有効なのだろうなあ、という感想を持ちました。川柳と俳句の境界は、幅のない線というよりは、混ざり合って流動しあう帯域のようなものであるという気がします。
ところで、合同句会の文字の詠み込み、「砂」と「本」とくると、ボルヘスの「砂の本」が連想されます。
あの短編は無限性をテーマにした小説として語られがちですが、僕としては、むしろ、一回性をテーマとして読みたい小説です。いろいろな人の手を渡り続ける砂の本は、決して元の持ち主と次の持ち主を再会させることはない。そして、砂の本を読むときも、同じページを二度と開くことは出来ない。
むろん、川柳と俳句の交わりは、一回こっきりなんてことは全然なく、むしろ末永く続くことになるのでしょう。こんなに近いのに、ちゃんと別物どうしなのだから。
そうそう、「砂の本」には別の大きなテーマがあるとも読めます。それは、交換と贈与。語り手は、これまで交換の繰り返しによって自分の手元に渡ってきた砂の本を、図書館の棚に忍ばせます。ほとんど放棄とも読み取れる行為ですが、図書館というところは、本を読む人が集まるところです。語り手は気づいていないようだけれど、いずれ誰かの手に渡ることになるでしょう。そうすると、やはり人から人へ、本が渡ることになる。交換のような対価ぬきで、人から人へ、ただ砂の本だけが手渡されるというのは、ひとつの贈与です。
川柳と俳句の関係はどうでしょうか。そこには交換もあれば贈与もあるかもしれない。もっとも、この場合は交換ならぬ交感こそが理想的なようにも思われますが。
●
それでは、また、次の日曜日にお会いしましょう。
no.383/2014-8-24 profile
■飯島章友 いいじま・あきとも
1971年生まれ。「川柳カード」同人、「歌人集団かばんの会」会員、「ぷらむ短歌会」会員。第25回短歌現代新人賞受賞。
■きゅういち
本名、宮本久。1959年大阪生まれ。2003年川柳開始。川柳誌「ふらすこてん」「川柳カード」同人。
■清水かおり しみず・かおり
1960年高知県生まれ。1993年「川柳木馬ぐるーぷ」会員、2003年「バックストローク」創刊同人、2010年「Leaf」創刊同人、2012年「川柳カード」創刊同人、2014年「川柳木馬ぐるーぷ」発行人。
■なかはられいこ
1988年、時実新子の『有夫恋』で川柳と出会う。1998年、文芸メーリングリスト「ラエティティア」に参加。2001年、倉富洋子と二人誌『WE ARE!』創刊(1号~5号)。2004年3月、歌人の荻原裕幸氏、丸山進氏らと「ねじまき句会」を立ち上げる。2010年、朝日新聞「東海柳壇」選者。第一句集『散華詩集』(1993年、川柳みどり会)、第二句集『脱衣場のアリス』(2001年、北冬舎)、共著『現代川柳の精鋭たち』(2000年、北宋社)。
■八上桐子 やがみ・きりこ
1961年生まれ。時実新子に師事。無所属。
■相子智恵 あいこ・ちえ
俳人。1976年生まれ。1995年より小澤實に師事。2009年、第55回角川俳句賞受賞。共著に『新撰21』『虚子に学ぶ俳句365日』『子規に学ぶ俳句365日』『俳コレ』がある。俳句結社「澤」同人・俳人協会会員。
■笠井亞子 かさい・あこ
「麦の会」所属。「月天」「塵風」同人。現代俳句協会会員。2010年より西原天気と「はがきハイク」を発行中。
■谷口慎也 たにぐち・しんや
1946年、福岡県大牟田市生れ。現在『連衆』誌代表(編集・発行)。九州俳句協会、現代俳句協会に所属。句集に『残像忌』『俳諧ぶるーす』『谷口慎也句集』(全書)。評論集に『虚構の現実―西川徹郎の世界』『俳句の魅力』(共著)など。
■鴇田智哉 ときた・ともや
1969年木更津生まれ。第16回(2001年)俳句研究賞受賞、第29回(2005年)俳人協会新人賞受賞。句集に『こゑふたつ』。今秋、第2句集を上梓。
■中村安伸 なかむら・やすのぶ
1971年、奈良県生まれ。東京都在住。現代俳句協会会員。「豈」同人。共著に『無敵の俳句生活』俳筋力の会編(ナナ・コーポレートコミュニケーション)、『21世紀俳句ガイダンス』現代俳句協会青年部編(邑書林)。
■小池正博 こいけ・まさひろ
1954年生まれ。「MANO」「豈」同人、「川柳カード」編集人。句集『水牛の余波』(邑書林)、評論集『蕩尽の文芸―川柳と連句』(まろうど社)、編著『セレクション柳論』。 「川柳カード」http://senryucard.net/ 「週刊川柳時評」 http://daenizumi.blogspot.jp/
■樋口由紀子 ひぐち・ゆきこ 1953年大阪府生まれ。姫路市在住。「MANO」編集発行人。「バックストローク」「豈」同人。句集に『ゆうるりと』『容顔』。セレクション柳人『樋口由紀子集』。共著に『現代川柳の精鋭たち』。川柳Z賞受賞。川柳句集文学賞受賞。「川柳MANO」サイト
■柳本々々 やぎもと・もともと
かばん、おかじょうき所属。東京在住。
ブログ「あとがき全集。」http://yagimotomotomoto.blog.fc2.com
0 comments:
コメントを投稿