自由律俳句を読む 58 種田山頭火〔2〕
馬場古戸暢
馬場古戸暢
前回に引き続き、種田山頭火句を鑑賞する。『俳句界』206号(2013年9月号)掲載句からの選である。括弧内は詠まれた場所を示す。
こんやはこゝで雨がふる春雨(京都) 種田山頭火
無事に今夜の寝床をみつけることができたようで、何よりである。「雨がふる春雨」における雨の連続に、雨に降られるおかしみを感じてしまうのは私だけだろうか。
ふるさとはちしやもみがうまいふるさとにゐる(山口・防府) 同
ちしゃとはレタスのこと。そう信じていたら、山口出身の人より、ちしゃとレタスでは味がまったく違うといわれた。ふるさとの水と土で育ったちしゃもみ、さぞ美味しかろう。
曼珠沙華咲いてこゝがわたしの寝るところ(山口・小郡) 同
漂泊に生きる人にとっては、今夜の寝床探しは一大イベント。曼珠沙華がそばに咲いているところをみつけられたならば、さぞ嬉しかろう。
花いばら、ここの土とならうよ(山口・川棚温泉) 同
ほ
川棚温泉を気に入り、この地に庵を結び、死に場所にしようとした山頭火。この句を詠んで後、結局は結庵にいたらず、川棚を去ることになる。
うしろすがたのしぐれてゆくか(福岡・飯塚) 同
昭和6年、熊本にも落着けなかった山頭火が、再び旅を始めた頃に詠んだ句。このうしろすがたから、山頭火は多くの名句を生み出して行くのである。
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