2014-10-12

【週俳9月の俳句を読む】読み手の答え  しなだしん

【週俳9月の俳句を読む】
読み手の答え

しなだしん



麩を折りて月の毀るるやうな音   森山いほこ

そういえば「麩」という素材を使った俳句はあまり見たことがない。というより、この句には「麩」しか実体がない。季語の「月」も比喩として使われている。
ところで「麩」は「折る」ものなのだろうか。「割く」や「ちぎる」ならば麩でもありうるが、「折りて」からはそれなりの細さや薄さが必要な気がする。
実は麩には様々な形状があるようで、仙台には細長い麩があるらしいし、山形庄内には板状の麩もあるらしい。この句の麩はそういうものを想像するのだろうか。だが少なくとも板状の麩では「月の毀るるやうな音」はしないだろう…。
いわゆる乾燥麩などではなく、「麩菓子」を想えばいいのかもしれない。うむ、麩菓子。「月の毀るるやうな音」のような気がしてきた。

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紙ふぶき拾へば四角秋祭   岡田由季

愛知県豊田市には、大量の紙ふぶきが舞う中を山車が練り歩く、挙母祭りという秋の祭があるそうな。秋祭は、秋の収穫を神に供えて感謝するものだが、気候のよい秋にはいろんな趣旨の祭が催される。この句も秋祭の一つのイベントのシーンかもしれない。
ちなみに紙ふぶきは四角よりも三角の方が降り方が美しいらしい。三角の方が回転しやすく、揚力と抗力のバランスがよいのだそうだ。だが、三角にするのは四角より一手間増える。両方を混ぜると落ちる速度が違ってよりきれいだという話もあるようだ。たかが紙ふぶき、されど紙ふぶき。
この句の紙ふぶきは四角。素朴な白を想像した。「拾う」に作者の手触りがある。秋祭が終れば短い秋も終りが近い。

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また村が森にのまれる秋夕焼け   中山宙虫

森にのまれる村。なんとなく広島の土砂災害を想像してしまった。だが「また」だから繰り返し起きる事なのだろう。土砂災害も繰り返し起きる事もあるだろうが…。
この句の「秋夕焼け」は取合せではなく、「秋夕焼け」によって小さな村が森をなす山の影にすっぽり収まる、そういう景なのかもしれない。

秋の日は釣瓶落し。夕闇に遅れて家々に灯がともる。


第388号2014年9月28日
中山宙虫 時間旅行記 10句 ≫読む
岡田由季 多国籍料理 10句 ≫読む
第387号 2014年9月21日
森山いほこ 昨日の銀座 10句 ≫読む


1 comments:

大江進 さんのコメント...

私は山形県庄内地方に住む者ですが、庄内麩といわれる薄板を幾重にも折り畳んだような麩は、調理するときに手でばりばりと折って使います。卵でとじたりするととてもおいしい。したがって挙句の麩は私は庄内麩のような層状の板麩かとすぐにイメージしました。
(※ 上記とは関係ありませんが、コメントしてもリターンがほとんどないのは悲しいですねぇ)