【週俳・2015新年詠を読む】
新年詠を読んだ。
生駒大祐
遠くにいたので、正月の週刊俳句を見ていなかった。
それを利用して、今回は無記名で新年詠を読み、上から10句を選んでみるということを行ってみた。
俳句を無記名で選ぶ、というのは実は不思議な行為である。
それは犬が、知能ではなく嗅覚を元に算数の問題を解くのにも似ている。
かすかな手がかりを元に、私の中の「俳句」を探す。
コメントは、ノートの隅に書かれた落書きだと思ってくだされば。
1 物と物触れ合はずある淑気かな
普遍的なことを言おうとしている。「ある」が動かない。
2 正月のいたるところに貼つてある
白を想像させる句。正月とは白いものなのか。
3 歌いだすまえの冷たいお正月
皮膚感覚の句。共感覚でもある。滲む感じがした。
4 からまつは縦に美し初茜
a音は縦方向の音なのだなと思った次第。
5 鏡餅歯科医師レジスターを打つ
アクチュアルな句だが、言葉の世界にいまだとどまっているように思った。
6 裏白や岬は空をつらぬけり
下からのアングル。ここでも白が出てくる。
7 双六を司る手のきらきらす
自らの繊細さを出すことを厭わない姿勢がある。正しいか。
8 静岡は良いところなり初笑
初笑がテクニカル。俳句。
9 てのひらに遠き手の甲年明くる
言葉の世界の構築の方法が確立されてしまっている。ほんとうに正月なのか。
10 鏡餅しんしんと杉立ち並び
鏡餅の質感と杉の質感。テクスチャーの相違。言葉の質感の相違でもある。
俳句は、既に終わっている。
優れた問いとはおそらくそういうものだろう。
ゆっくりと閉じていく幕を見ながら、これまでを短く回想する。
そう感じた。
物と物触れ合はずある淑気かな 依光陽子
正月のいたるところに貼つてある 嵯峨根鈴子
歌いだすまえの冷たいお正月 田島健一
からまつは縦に美し初茜 南十二国
鏡餅歯科医師レジスターを打つ 瀬戸正洋
裏白や岬は空をつらぬけり 五島高資
双六を司る手のきらきらす 黒岩徳将
静岡は良いところなり初笑 西村麒麟
てのひらに遠き手の甲年明くる 山田露結
鏡餅しんしんと杉立ち並び 村上鞆彦
2015-02-08
【週俳・2015新年詠を読む】新年詠を読んだ。 生駒大祐
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 comments:
コメントを投稿