〔今週号の表紙〕
第416号 残花
雪井苑生
いつだったか深夜に何気なくTVのチャンネルを変えた時、素晴らしくきれいなアニメの桜の映像が飛び込んできた。なんというアニメか知らないまま抒情的な映像の美しさに魅了されて最後まで観続けてしまい、わかったタイトルが「秒速5センチメートル」。このタイトル、何が秒速5センチメートルかというと「桜の花びらが舞い落ちる速度」だそうだ。なるほど、とすると高いところにある花びらは地上に着くまでに1分以上かかるのだろうか。
初桜、満開の桜、散る桜、時に花吹雪、夜桜。桜の季節はともかく桜が見たくて落ち着かない気分だ。雨が降っても風が吹いても気になる。だから葉が出始めた枝にぽつぽつと残る花が風の吹くたびに散ってゆく頃になると、一抹の寂しさと共にほっとした気分になるのも正直な気持ち。
残る花も次々に散って水面の花筏に加わる。最初は雪のようだった花筏も茶色くなり、やがて流れ去ってゆく。葉桜と言われるのもつかのま、緑に埋もれてもうどれが桜の木だかわからなくなる頃、季節は既に初夏に移り変わり、気分も一新。毎年のことだけど飽きることのない素晴らしい出会いと別れだ。桜お疲れさま、また来年ね。
ところで「秒速5センチメートル」、ほんとにきれいなアニメだった。最初からちゃんと観たいのだけど、どこかでオンエアしてくれないかなあ。
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