【週俳4月の俳句を読む】
宇宙に舞う
陽 美保子
鳥曇積み上げらるる箱いくつ 満田春日
この箱は何の箱でもよいが、私は空っぽのトロ箱を想像する。想像する箱によって、鑑賞はかなり違ってくるだろう。我儘な鑑賞を許してもらえれば、北国で鰊のシーズンが終わった後の時期。海に面した小さな舟屋では、窓を覆うばかりにトロ箱が山積みされる。大忙しの浜辺の仕事が一段落してほっとした時、つくづくと海を眺め、空を眺める。「鳥曇」という季語がこのような連想をさせる。
瞳孔に海の色あり巣立鳥 引間智亮
鳥の目の色を詠んだ句はあるかもしれないが、瞳孔を詠んだ句は寡聞にして知らない。瞳孔とまで言い切ることにより虚が強まる。つまり、ここに作者の主観が反映される。瞳孔を海の色と断定することで、巣立鳥へ託す作者の憧れが窺え、詩情溢れる一句となっている。
飛花落花地球はくす玉のかたち 工藤玲音
地球をくす玉のかたちと断定した手柄。球体の物はいろいろあろうが、くす玉を想像することにより、祝福と同時に破壊を連想させる特異な句となっている。くす玉であれば、本来は祝福されるべきものであろうが、地球がぱっかりと割れるところを想像すると、とても祝福とは言えない。割れた瞬間、桜の花びらが散り、マグマが流れ出す。桜の花も死を連想させることを考えれば、実に周到な句といえよう。人々は死んでいく途中であることも知らないで、笑いながら死んでいく。これは痛烈な批判の句であるかもしれない。そして、映像として描いてみると実にシュールである。花びらと地球のかけらが宇宙に舞ってゆっくり遊泳しながら幕が閉じる。
第467号 2016年4月3日
■髙田獄舎 現代鳥葬 10句 ≫読む
■兼城 雄 大人になる 10句 ≫読む
第468号 2016年4月10日
■満田春日 孵卵器 10句 ≫読む
■引間智亮 卒 業 10句 ≫読む
第469号 2016年4月17日
■工藤玲音 春のワープ 10句 ≫読む
■益永涼子 福島から甲子園出場 10句 ≫読む
第470号 2016年4月24日
■九堂夜想 キリヲ抄 10句 ≫読む
■淺津大雅 休みの日 10句 ≫読む
鳥曇積み上げらるる箱いくつ 満田春日
この箱は何の箱でもよいが、私は空っぽのトロ箱を想像する。想像する箱によって、鑑賞はかなり違ってくるだろう。我儘な鑑賞を許してもらえれば、北国で鰊のシーズンが終わった後の時期。海に面した小さな舟屋では、窓を覆うばかりにトロ箱が山積みされる。大忙しの浜辺の仕事が一段落してほっとした時、つくづくと海を眺め、空を眺める。「鳥曇」という季語がこのような連想をさせる。
瞳孔に海の色あり巣立鳥 引間智亮
鳥の目の色を詠んだ句はあるかもしれないが、瞳孔を詠んだ句は寡聞にして知らない。瞳孔とまで言い切ることにより虚が強まる。つまり、ここに作者の主観が反映される。瞳孔を海の色と断定することで、巣立鳥へ託す作者の憧れが窺え、詩情溢れる一句となっている。
飛花落花地球はくす玉のかたち 工藤玲音
地球をくす玉のかたちと断定した手柄。球体の物はいろいろあろうが、くす玉を想像することにより、祝福と同時に破壊を連想させる特異な句となっている。くす玉であれば、本来は祝福されるべきものであろうが、地球がぱっかりと割れるところを想像すると、とても祝福とは言えない。割れた瞬間、桜の花びらが散り、マグマが流れ出す。桜の花も死を連想させることを考えれば、実に周到な句といえよう。人々は死んでいく途中であることも知らないで、笑いながら死んでいく。これは痛烈な批判の句であるかもしれない。そして、映像として描いてみると実にシュールである。花びらと地球のかけらが宇宙に舞ってゆっくり遊泳しながら幕が閉じる。
第467号 2016年4月3日
■髙田獄舎 現代鳥葬 10句 ≫読む
■兼城 雄 大人になる 10句 ≫読む
第468号 2016年4月10日
■満田春日 孵卵器 10句 ≫読む
■引間智亮 卒 業 10句 ≫読む
第469号 2016年4月17日
■工藤玲音 春のワープ 10句 ≫読む
■益永涼子 福島から甲子園出場 10句 ≫読む
第470号 2016年4月24日
■九堂夜想 キリヲ抄 10句 ≫読む
■淺津大雅 休みの日 10句 ≫読む
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