【八田木枯の一句】
ふと手紙書いてみたくて枯芙蓉
太田うさぎ
ふと手紙書いてみたくて枯芙蓉 八田木枯
「雷魚」40号「汗馬楽鈔補遺(壱)」より。
近所の川に架かる橋のうちで最も短い橋の袂に一本の芙蓉が自生している。すぐ目の前の寺から種が運ばれて育ったものかもしれない。長く続いた今年の残暑のせいか、つい最近まであでやかな花をつけていたが、ちょっと見ないうちにみるみる枯れ進んでしまった。
枝の先に枯れた芙蓉の実が幾つも開いている。そういえばその姿は空へ何か便りを送ろうとしているように見えなくもない。ふっと誰それの顔が心に浮かび、特別な用事があるわけではないけれどペンを執りたくなる。ほんとうに書くかどうかは分からない。誰と思い定める宛先もないかもしれない。ただ、なんとなく便箋を広げてよしなしごとを認めてみたくなる。そんなとき、きっと人は少しばかりさみしいのだろう。
2016-11-27
【八田木枯の一句】ふと手紙書いてみたくて枯芙蓉 太田うさぎ
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