2019-02-03

藤原暢子✕中嶋憲武の音楽千夜一夜 キン・バヘイロシュ「バカリャウ・ア・ポルトゥグェーザ」

藤原暢子中嶋憲武の音楽千夜一夜
キン・バヘイロシュ「バカリャウ・ア・ポルトゥグェーザ」


暢子●こんばんは。よろしくお願いします。ここはBGMが昭和歌謡でいい感じですね〜。

憲武●ええ、好きなお店です。暢子さんは、よくポルトガルへ行かれてるんですよね。

暢子●31歳の時に道楽で2年弱住んじゃって、その後もずるずる通ってます。そこで、ポルトガルの祭に欠かせない音楽ジャンル「PIMBA(ピンバ)」、その中から勝手に代表曲として1曲紹介したいと思います。Quim Barreiros(キン・バヘイロシュ)の「Bacalhau à Portuguesa(バカリャウ・ア・ポルトゥグェーザ)」です。あえてのライブバーション。


暢子●歌詞の意味は分からないと思うんですが、聴いた第一印象どうですか? ヴィジュアルの印象でもいいですよ。

憲武●アコーディオンの音色が物悲しいですね。ポルトガルの民族歌謡のファドってもっと明るいでしょう? ステージの上で踊ってる人々の熱気がスゴイですね。

暢子●あら意外です。ファドの方が物悲しいイメージ持ってる方が多くて、歌手の方がよく「ファドにはあかるい曲もあるんですよ」とおっしゃってます。さて、若者の熱気の理由ですが…「ピンバ」の歌はですね、たいてい裏の意味があって、セクシャルなことを歌っております。ちなみにバカリャウは干し鱈のことで、ポルトガルでよく使う名物食材です。んで、この曲の出だしは「君のバカリャウの香りをかぎたいよ! マリア!」と歌っています。さて、どんな想像をされますか?          

憲武●「チャタレイ夫人の恋人」で、「チーズのような匂い」と表現された部位ですね。男女同衾の極めてエロティックな場面でしょうか。

暢子●そう!そんなんです! しかし、憲武さんの返しが素晴らしくて感動しています(笑)               

憲武●いやいや。極めて直情的積極的な求愛の歌ですね。

暢子●積極的なのがですね。このあと「君のバカリャウ(料理)を嗅ぐために、オレを台所へ入れておくれ!」と続きます。実はこの「台所」の単語「Cozinha(コジーニャ)」にカラクリがあるのが最近分かりまして…。

憲武●ほほう。どんな?

暢子●「Cuzinha(クジーニャ)」とかけているらしいんです。「Cu(クー)」ってのが、俗語で「お尻」なんですよ。ちなみにジーニャとかジーニョってのは、小さいものとか可愛らしいものの語尾につける言葉なので、「お尻ちゃん」ってところでしょうか。極めて直情的!合ってますね!

憲武●おお! ロナウジーニョ! 小さなロナウドくんて意味だったのかー!

暢子●憲武さん学習が早い!他にも「Garagem da Vizinha(隣人の駐車場)」って曲も、隣に旦那と別れて独り身の奥さんがいて、その家に車を入れに行くって歌なんですが、まああそこに入れるって意味だって友達に教わりました。


憲武●この話の流れですと、隣の独り身の奥さんの家に車を入れに行くと聞いただけでピンと来るものはあります。

暢子●きわめつけに、彼はわざわざ誕生日記念アルバムを69歳の時に作ってます。直情的!表題曲が「Eu faço 69」なんですが、「Eu faço」って「私は〜歳になる」と「私は〜する」の二つの意味でとれるんです!何か、熱心にポルトガル語の訳の説明するのがくだらなくて笑えてきました。

憲武●オーディエンスは、かなりノリノリで楽しんでますけど、もちろんそうした隠された意味も分かった上で楽しんでるわけですね。なんとおおらかな。

暢子●おおらか! いい言葉ありがとうございます。最初に祭って言いましたけど。特に夏祭の時は、都会も村も、通りで夜通しピンバが流れていて、みんな踊るんです。老若男女問わず。私、正直、はじめてピンバを聴いた時は「だっさい音楽だなぁ」と思っていたんですが、祭を重ねるうちに、だんだん好きになってきて。今では、聴くと踊らずにはいられない体になりました。ホントに。

憲武●ポルトガルの祭の写真を、またたくさん撮って来て下さい。写真展絶対行きますから。今日はありがとうございました。

暢子●こちらこそありがとうございました。楽しかったです!


(最終回まで、あと920夜) 
(次回は西原天気の推薦曲)

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