2019-03-24

後記+プロフィール622

後記 ◆ 福田若之

もう桜の季節ですね。僕は、染井吉野よりも、枝垂れ桜のほうが好みです。──いや、そうではないな。枝垂れ桜が好みなんです。虛子に《春潮といへば必ず門司を思ふ》という句がありますけれど、個人的に、枝垂れ桜といえば必ず思うのが宇治の平等院です。

けれど、いつの春に行ったのか、もうあいまいで、そもそも行ったのがほんとうに春だったのか、桜の咲いている時季だったのかも、自信がありません。中学校のころか、高校のころか、そのどちらかだとは思うのですが。もう、十年かもう少し前のことになりますか。誰かといたはずなのに、その誰かもひとりではないはずなのに、そんなことさえ忘れてしまっているのです。そもそも、平等院に行ったのは、一度かぎりのことだったのでしょうか。それさえどうだかあやしいものです。

そんな次第ですから、枝垂れ桜といえば必ず宇治の平等院を思うからといって、思い浮かべているその枝垂れ桜が、宇治の平等院にある枝垂れ桜の思い出なのかは、さっぱりわかりません。 



それではまた、次の日曜日にお会いしましょう。

no.622/2019-3-24 profile

■広渡敬雄 ひろわたり・たかお
1951年福岡県生まれ、「沖」同人、「青垣」会員、「塔の会」会員、
俳人協会会員。句集『遠賀川』『ライカ』(ふらんす堂)『間取図』(角川書店)。
『脚注名句シリーズⅡ・5能村登四郎集』(共著)。
2012年角川俳句賞受賞。2017年千葉県俳句大賞準賞。

■加藤綾那 かとう・あやな
1993年生まれ
「船団の会」会員

■対中いずみ たいなか・いずみ
1956年生まれ。田中裕明に師事。第20回俳句研究賞受賞。「静かな場所」代表、「椋」会員。句集に『冬菫』『巣箱』『水瓶』。

■堺谷真人 さかいたに・まさと
1963年大阪生まれ。芦屋在住。「豈」「一粒」同人。現代俳句協会会員。共著に『超新撰21』など。

■三宅桃子 みやけ・ももこ
2005年より作陶を始める。2013年より俳句を始める。
作陶は「土やき研究会」で活動。俳句は、超結社「豆の木」を中心に作句。
2016年、「陸」入会。


中嶋憲武 なかじま・のりたけ
1994年、「炎環」入会とほぼ同時期に「豆の木」参加。2000年「炎環」同人。03年「炎環」退会。04年「炎環」入会。08年「炎環」同人。

西原天気 さいばら・てんき
1955年生まれ。句集に『人名句集チャーリーさん』(2005年・私家版)、『けむり』(2011年10月・西田書店)。笠井亞子と『はがきハイク』を不定期刊行。ブログ「俳句的日常」 twitter

岡田由季 おかだ・ゆき
1966年生まれ。東京出身、大阪在住。「炎環」「豆の木」所属。2007年第一回週刊俳句賞受賞。句集『犬の眉』(2014年・現代俳句協会)。ブログ 「道草俳句日記」

福田若之 ふくだ・わかゆき
1991年東京生まれ。「群青」、「オルガン」に参加。第一句集、『自生地』(東京四季出版、2017年)にて第6回与謝蕪村賞新人賞受賞。第二句集、『二つ折りにされた二枚の紙と二つの留め金からなる一冊の蝶』(私家版、2017年)。共著に『俳コレ』(邑書林、2011年)。

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