【週俳4月の俳句を読む】
当らぬも八卦
羽田野令
チューリップ散つて校舎の影が凸 金丸和代
凸の字を「とつ」と読むのか、「でこぼこ」の「でこ」と読むのか、影が出っ張っているということなのか、などと考えて何度も見ていたら、あっ!とわかった。この字の形が校舎なのだ。凸は、校舎を象っている様な字である。
チューリップは学校によく植わっている花だが、そのチューリップも散ってしまった春闌けた頃の夕方、校舎が大きく凸の字型に校庭に影を落としているという景が浮かぶ。
凸の字の機知が楽しい。
亀鳴くや易者の使ふ竹の棒 常原 拓
易者は竹の棒、筮竹(ぜいちく)を使う。映画などで見ていると、筮竹を何度も擦り合わせその音で煙に巻いて勿体をつけてご神託の様に何か言う。易は当たるのか当たらないのか。まあ、当たるも八卦当らぬも八卦と言うからには、元々わからないものなのだろう。
亀は鳴くのか鳴かないのか。易のような怪しげな場面では、筮竹の音に紛れてこっそり鳴いているのかも知れない。
#春(ハッシュタグはる)来にけらし人界に 佐藤りえ
電子画面上に誰かの投稿した春の景を見る、それで、「もう土筆の出る頃なのか」だの、「わあ、雲雀だ」だの思うという私たち。かつては自然界の中に人界もごっそり含まれていたから人は直接自然に接して春を知ったのだが、今の都会での忙しい生活では、気温の変化や日の長さぐらいの事以外は画面の中に知ることが多いのかも知れない。
#についてはあまりよく知らないのだが、ハッシュタグという語の最初の使用は、「ハッシュタグとはTwitterでのグループ化である」という2007年の記事に於いてとのこと。ツイッター等で「#」をつけておくと関連投稿を検索するのに便利であるらしい。
「#」という新しい記号を使った句に、「来にけらし」という古語を配しているのが巧みである。
2019-05-12
【週俳4月の俳句を読む】当らぬも八卦 羽田野令
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 comments:
コメントを投稿