【週俳4月の俳句を読む】
春のからだ
八上桐子
春寒の蠟燭点せば声変はる 金丸和代
暦の上では夏だというのに、今年はまだ春寒のような日もちらほら。特に、風。春の装いに風がしみる。蠟燭の火にとっては、人の息も風。点しながら息を詰めるので、やや小声になる。小さな風が大きな風に溶け、炎のぬくもりが春のあたたかさへと広がってゆく。
フリージア働かぬ日の君の耳たぶ 金丸和代
働かぬ日の君は、好ましいのか否か。フリージアは甘くフルーティに、しっかり強く香る。う~~ん、鬱陶しい方に一票。「ちょっと、バナナの皮ぐらい捨ててよ〜」。聞こえてるくせに、もうっ!と、やたら目につく耳たぶ。けれど、フリージア。俳人は、ぼやきもうつくしい。
虚子の忌の釦の多き昇降機 常原 拓
ボタンが多いということは、高層階へ上ることのできるエレベーター。非日常な高さへと上昇する感覚は、亡き人へ思いを寄せることとどこか通じる。ましてや、俳人にとっての虚子。からだから一瞬浮遊したたましいが、遠いとおいたましいに触れそうな。
二ン月のボディビルダー割れて来し 佐藤りえ
二ン月とボディビルが絶妙。「ニン・ガツ」の音の響きの力強さ。ポーズを決める際の掛け声にしてもいいだろう。縦書きの字面など、腕を捻り上げている姿に見えてくるではないか。バッキバキの筋肉が、今まさに盛り上がってくる。古風なのにマッチョで、ギャップ萌えしてしまった。
2019-05-12
【週俳4月の俳句を読む】春のからだ 八上桐子
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