2019-05-19

後記+プロフィール630

後記 ◆ 村田 篠



先日、姫路の「好古園」という日本庭園を散歩していたら、竹林の中の一群がごっそり枯れているのに気づきました。「どうしたんだろう」と思いながら近づいてみると、濃い紫色の稲の穂のような、これまでに見たことがないものが、竹の節から生えています。

「竹の花」でした。竹は60年に1度、種類によっては120年に1度しか開花しないものだと聞いたことがあります。珍しい花に遭遇して、少しテンションが上がったような気がしました。



竹は長い周期で花を咲かせたあと、地下茎で繋がった一群がすべて枯れてしまうそうです。何十年もかかって竹林を形成したのち、ただ一度の開花で一群すべてが竹の一生を終えるのですが、そのときに実を残し、それがまた新しい竹を誕生させ、林へと成長します。

不思議なことに、個体ごとにバラバラに開花するのではなく、ある時期に全国各地で開花が多く見られるそうで、今年はその年に当たっているようです。あまりにも一斉に枯れてしまい、竹細工の材料が不足したことも過去にあったとか。

素人にはよく分からない竹の生態ですが、ネットでいろいろな記事を見ているうちに、もうひとつ、珍しい竹の特徴を見つけました。

竹のまっすぐ上に延びている部分は「稈」と呼ばれる茎なのですが、成長すると堅くなる「木」の特徴を持っています。ところが、内部が中空で太く肥大しないところは「草」の特徴を表していて、つまり竹は、「木」なのか「草」なのか、学術上はっきりと決められないのだとか。



植物の種目のひとつとして長く生息してきた竹が、いまだにカテゴライズできない曖昧な生き物だとは、面白いものです。でもまあ、人知の及ばないものは、ほかにもこの世にたくさんあります。所詮カテゴライズするのは人間ですから。

ちなみに、「竹の花」を季語として掲載している歳時記はあります。でも私は、「竹の花」という素材につきまとう「時間」には、何を言っても太刀打ちはできないような気がするので、一生この季語は使わないような気がします。


それではまた、次の日曜日にお会いしましょう。


no.630/2019-5-19 profile 

■対中いずみ たいなか・いずみ
1956年生まれ。田中裕明に師事。第20回俳句研究賞受賞。「静かな場所」代表、「椋」会員。句集に『冬菫』『巣箱』『水瓶』。

遠藤由樹子 えんどう・ゆきこ
1957年生まれ。鍵和田秞子に師事。「未来図」編集長。句集に『濾過』。第61回角川俳句賞受賞。

中嶋憲武 なかじま・のりたけ
1994年、「炎環」入会とほぼ同時期に「豆の木」参加。2000年「炎環」同人。03年「炎環」退会。04年「炎環」入会。08年「炎環」同人。

■岡本遊凪 おかもと・ゆうなぎ
1949年福井県生まれ、大阪府在住、(一社)日本連句協会会員、「川柳北田辺」会員、「川柳スパイラル」会員。

西原天気 さいばら・てんき
1955年生まれ。句集に『人名句集チャーリーさん』(2005年・私家版)、『けむり』(2011年10月・西田書店)。笠井亞子と『はがきハイク』を不定期刊行。ブログ「俳句的日常」 twitter

■村田 篠 むらた・しの
1958年、兵庫県生まれ。2002年、俳句を始める。現在「月天」「塵風」同人、「百句会」会員。共著『子規に学ぶ俳句365日』(2011)。「Belle Epoque」

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