【週俳5月の俳句を読む】
なんとなしに
箱森裕美
藤棚にひろがる食べられないぶどう うにがわえりも
春の終わり、暑さも感じる日も増えてくる辺りに藤の花は咲く。大棚から一斉に垂れ下がるようすは圧巻で、こちらを沈黙させるインパクトがある。掲句はその藤の花一房一房を、「食べられないぶどう」と表現したのだろう。確かに色もかたちも似ている。おさなごのように、とも言える素直な目線と表現が、おかしみを生み出している。
しかしこれ、本当に「食べられないぶどう」が広がっている可能性もある。
造花を土に直接挿したり、目立たないような植物に括りつけたりして、一年中花が咲いているものを時々見かけるが、もしかしたらそのような感じで、本当に偽物のぶどうがところどころに付けられていると読んでも面白い。
フローリングなめらかマイケルジャクソン忌 うにがわえりも
マイケル・ジャクソンが突然この世を去ったのは2009年6月25日だ。あらためて、もう10年も経とうとしていることに驚いてしまった。2009年、立て続けにミュージシャンが亡くなってしまった年だった。
そういえば今日は、と、なんとなしにマイケルの代名詞ともいえるムーンウォークを試みたのだろう。6月25日であればまだまだ梅雨は明けずに、気温も湿度も高くじっとりしている。フローリングの床もべたついているはずだ。ただこの日はどことなく空気も乾いている気がする。床も引っかかりを感じさせず足がスムーズにすべる気がする。
2019-06-09
【週俳5月の俳句を読む】なんとなしに 箱森裕美
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