【週俳5月の俳句を読む】
なんとかしましょうよ
青島玄武
角川俳句賞に毎年投稿してまして。今年も投稿いたしましたが、本当に毎年思うことがあります。
あの募集要項、何とかなりません?
俳句を知らない方がたまたま読んでいるかもしれないので、ちょっとだけ触れておきますと、この賞は「俳句界の芥川賞」なんぞとも呼ばれている俳人憧れの賞なのでございます。
では、その募集要項をおさらいしておきましょう。
未発表作品50句年齢制限がありませんから、パソコンを扱えない世代の方が原稿用紙をお使いになられる。これはわかります。
●B4判400字詰原稿用紙を使用してください。
●ワープロ原稿の場合は、B4判無罫用紙を20行取りとし、大きめの明朝体を使用してください。
●原稿冒頭に作品の表題(全体を要約するタイトル)と作者名を 明記してください。
●別紙に次の項目を記して同封してください。
(1)表題
(2)俳号・本名・生年月日・年齢・性別
(3)郵便番号・住所・電話番号
(4)略歴(師系・俳歴・受賞歴・所属結社等)
(5)現在の所属結社
(6)職業
●50句中に既発表作品、二重投句があれば無効となります。
(既発表作品には新聞、雑誌、結社誌、同人誌、句会報のほか、ホームページ、ブログ等に掲載された作品も含まれます)
ただ、その次の
●ワープロ原稿の場合は、B4判無罫用紙を20行取りとし、大きめの明朝体を使用してください。って、条件厳しすぎやしませんか?
だって家庭用のプリンターって、ほとんどがA4規格で、B4判なんてどうやっても無理。
てゆーか「ワープロ」って、「ワープロ」って!
(大事なことだから二回言いました)
仕方ないので、50句をパソコンの文書作成ソフトで並べて、それを印刷したのを原稿用紙に書き綴るという原始的な方法をとっていますが、それも決まった形式がないのでどうやって書いていいかわからず、毎回「これでいいのかな?」と首を捻りながら書いてます。
この方法を取ると、どうしても書き終えた段階で数句足りない、なんてことが……。
まー、自分の注意不足が原因ですが、そのために原稿用紙を無駄にしてしまうのが本当に忍びないです。
現代俳句協会の『兜太現代俳句新人賞』は、そのへん緩やかで、
応募要項A4版の400字詰め原稿用紙なら、文書作成ソフトの機能で原稿用紙設定ができるので、50句を確認後、サクッと変換してきれいな原稿用紙の原稿にすることができます。
句数:雑詠50句。但し、未発表の作品に限る(他への二重投句は不可)。作品には 必ずタイトル(題名)をつけること。
応募用紙:A4版・400字詰め原稿用紙3枚にタイトルと50句を記入。これとは 別に、同じ大きさの原稿用紙1枚に、タイトル、氏名、性別、年齢、住所、電話番号、俳歴を明記し、計4枚使用。
※作品を記入した原稿用紙に氏名を記入しないようにお願いします。
※応募原稿は返却しません。
応募資格:年齢を50歳未満(締切日を基準)とする。
応募料:整理費として2,000円(定額小為替同封または現金書留)
締切日:2019年5月31日(必着)
角川俳句賞の場合は手書きで清書するので、どうしても誤字脱字が出たりします。そのあたりを修正液で何とかしないといけないの、本当に面倒だし、見栄えも最悪に……。
年齢制限はありますが、これなら、別に2000円払ってでも応募したいですね。(応募しました)
「ワープロ世代」の方々には、より若い世代が俳句に親しむようになるためにも、もう少し間口を広げるような募集要項にしてみたらいかがでしょうか?
ということで、そんな若い世代の俳句がスマートフォンで気軽にみられるのが『週刊俳句』さんの良いところ。
川嶋健佑 『鍵垢手垢』5月5日号より
難解な句と平明な句が折り重なって見事な俳句作品群。
椅子のない部屋が灯って鳥雲に
青嵐の椅子のまわりに椅子を置く
椅子に名はなくて皐月という異名
椅子持って葉桜抜けて古都の家
椅子の句が10句中4句収録してありますが、どれも個性的。
1句目は平明かつ寂しい雰囲気。
2句目は「青嵐」で切らずに「青嵐の」としたことでどこか儀式的な不穏な空気が。
3句目はちょっと謎な句? なんで椅子に「皐月」という異名がついたのか、読者に丸投げされた、個人的に「落とし穴俳句」と呼んでいるジャンル。落とし穴に落ちて様々なリアクションを取る芸人を隠しカメラで撮っていて、その映像をにやにやするテレビのドッキリ番組のように、その俳句にどんなリアクションをするのかを作者が楽しんでいる。
4句目は想像するに楽しい俳句。おそらくは奈良県でしょう。大きなお寺の近く、葉桜を抜けて家まで。って、なんで椅子持っているんでしょうか? 持っているとしたらどれほどの椅子? 携帯できる折り畳みのタイプでないとだめですよね。奈良の人の独特のイントネーションの会話が聞こえてきそう。
他の句も「いや、それなに?」と訊きたくなる俳句もあるけど、ちゃんと俳句の歴史を知っている人が作っている俳句で、本当に25歳なの?と思いました。
藤本夕衣 『つややかに』5月12日号
非常に格調の高い作品群。もう少し山奥には山姥もいそうな山村の生活を見るようで、まるで飯田蛇笏や原石鼎のような風格を感じましたが、わたくしと同じ40代の方と聞いて驚いております。
まなかひに炎をみつめ春惜しむ
火の中の椎の若葉もありにけり
白服に煙のにほひまとひ来し
この三句で連作のような格調が。どれも古典を踏まえている方でないとできないと思います。
柴の束ほどき八十八夜かな
茶葉を煎るための柴なのか、はたまた炊事や風呂焚きのための柴なのかはわかりませんが、湿気や重量感といった質感があって俳句の旨味が堪能できる句だと思いました。
うにがわえりも 『食べられないぶどう』5月26日号
軽い調子にくすりとさせてくれる仄かなユーモア。
五月雨を呼び寄せている猫のひげ
紫陽花の話すは雨の言葉かな
フローリングなめらかマイケルジャクソン忌
ちょっと、ベタになりがちなところをあえて衝いてみせて反応をうかがっているようにも感じます。
空中にみどりの海わかばの波
代掻きや足首にくる土の息
たしかな観察眼でたしかな描写力。 平面でありながら野暮にはならない。
この方も20代なんですね。 本当に勉強になります。
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