2019-07-28

後記+プロフィール640

後記 ◆ 福田若之



物語におけるタイムトラベルには、過去にせよ未来にせよ、誰か(何か)が現在から別の時点へと赴くというパターンと、逆に、誰か(何か)が別の時点から現在へ不意にやってくるというパターンがありますね。これは、一見すると、出来事を見る視点が違うだけのようにも思える。

しかし、どちらの視点から語られるかというのは、もし現実にタイムトラベルできたならともかく、すくなくとも物語上のタイムトラベルにとっては大きな違いのように思うのです。

誰か(何か)が現在から別の時点へと赴く場合、タイムトラベルした人間が未来や過去を変えることの可能性が問題になります。どの程度変えてよいのか、あるいは、そもそも変えることができるのか。変えたつもりが結局は何も変わっていなかった、という話もよくありますよね。制限があるところでは困難が生まれて、それによって物語がもりあがる。

逆に、誰か(何か)が別の時点から現在へ不意にやってくる場合、やってこられた側の現在は、基本的に、来訪者の手でかなり自由に書き換えることができるようになっている。むしろ、そうなっていないと、来訪者がわざわざ現在へやってきたことの意味が薄れてしまうから、物語としては、よほどうまくしないとおもしろくならないということなのでしょう。

そんなことを思いながら、今夜は花火を観ていました。


それではまた、次の日曜日にお会いしましょう。



no.640/2019-7-28 profile 

楠本奇蹄 くすもと・きてい
2017年より暫定句会、「豆の木」参加。

■生駒大祐 いこま・だいすけ
1987年三重県生まれ。「天為」。「手紙」「クプラス」「オルガン」。「週刊俳句」。ustream番組「Haiku Drive」。第3回攝津幸彦記念賞。句集『水界園丁』。

柴田千晶 しばた・ちあき
1960年横須賀生。「街」同人。句集『赤き毛皮』(金雀枝舎)、共著『超新撰21』『再読 波多野爽波』(どちらも邑書林)。詩集『生家へ』(思潮社)など。映画脚本「ひとりね」。https://twitter.com/hiniesta2010

中嶋憲武 なかじま・のりたけ
1994年、「炎環」入会とほぼ同時期に「豆の木」参加。2000年「炎環」同人。03年「炎環」退会。04年「炎環」入会。08年「炎環」同人。

西原天気 さいばら・てんき
1955年生まれ。句集に『人名句集チャーリーさん』(2005年・私家版)、『けむり』(2011年10月・西田書店)。笠井亞子と『はがきハイク』を不定期刊行。ブログ「俳句的日常」 twitter

岡田由季 おかだ・ゆき
1966年生まれ。東京出身、大阪在住。「炎環」「豆の木」所属。2007年第一回週刊俳句賞受賞。句集『犬の眉』(2014年・現代俳句協会)。ブログ 「道草俳句日記」

福田若之 ふくだ・わかゆき
1991年東京生まれ。「群青」、「オルガン」に参加。第一句集、『自生地』(東京四季出版、2017年)にて第6回与謝蕪村賞新人賞受賞。第二句集、『二つ折りにされた二枚の紙と二つの留め金からなる一冊の蝶』(私家版、2017年)。共著に『俳コレ』(邑書林、2011年)。

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