〔今週号の表紙〕
第702号 秋祭
藤原暢子
奈良豆比古神社で毎年10月8日、秋祭の宵宮に奉納される翁舞。これは能楽の原点とも言われる民俗芸能であり、こぢんまりとした境内へ、多くの人がやってくる。しかし翌日10月9日、本祭の夜に奉納される相撲神事は、あまり知られていないのか、近隣の人々で和やかに行われている。
相撲といっても、古い型の奉納相撲の形なのか、取っ組み合いではない。ふんどし一丁の二人の男が、榊を掲げながら、境内にある舞台の周りを数回ぐるりと回ってお終いである。互いの体に触れることすらない。相撲が終わると、見にきていた近所の人々が、男達へ赤子を差し出す。男達は受け取った赤子を高々と掲げる。稲も人も、同じく「実り」として受けとめているようで、豊年を祝うに相応しい、あたたかな行為であった。
ちなみに、この赤子らの家族へ餅が贈られるのだが、この餅がなんともいい。餅米の粒の形が少し残り、つやつやと光る、円錐形の餅である。餅に見惚れていた私に、地元の方が「これ旨いんだぞう」と言ってきた。以来、ずっと味が気になって、忘れられない餅なのである。
※写真は2016年撮影
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