【週俳12月・1月の俳句を読む】
研ぎ澄まされる
藤本夕衣
北塞ぎ聞き耳ばかりたててゐる 箱森裕美
聞き耳をたてる、といえば、ふつう人の話し声を思う。たとえばひそひそ話や内緒話に、といったことを思い浮かべる。でも、「北塞ぐ」という季語があることで、人の声だけでなく、部屋や戸外のちょっとしたもの音を、自分を取り囲むすべてのもの音を聞き逃さぬよう耳澄ます様子が伝わってくる。閉じられた部屋のなかだけでなく、塞いだ窓の外の冬のもの音を聞き漏らさないようにしたい、冬の気配を感じ続けたい。そんな研ぎ澄まされた感覚が芯となった一句である。そして、その感覚自体が、冬らしい。
【対象作品】
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