後記 ◆ 福田若之
それにしても、とんずらとは、なんてすばらしい響きだろう。遁走の遁にずらかるのずらで、とんずら。漢語の響きと和語の響きが、こんなになめらかに結ばれてしまうとは。
とんずらという言葉の響きには、どこか明るく、軽やかで、救われた感じがある。とんずらという言葉が表すのは、たしかに褒められたことではないかもしれないけれど、その言葉自体にどこか憎めないところがあって、だからまた、ひとはあるときふっととんずらしてしまうことに憧れたりもするんだろうと思うんです。とりわけたとえば、自身の手を、いつかのそれとはまるで違う腫れぼったい肉の塊のように感じてしまうようなときには。
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それではまた、次の日曜日にお会いしましょう。
no.736/2021-5-30 profile
■宮本佳世乃 みやもと・かよの
1974年生まれ。「炎環」「豆の木」「オルガン」に所属。第35回現代俳句新人賞。句集に2012年『鳥飛ぶ仕組み』、2019年『三〇一号室』。
1994年、「炎環」入会とほぼ同時期に「豆の木」参加。2000年「炎環」同人。03年「炎環」退会。04年「炎環」入会。08年「炎環」同人。
■西原天気 さいばら・てんき
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