2021-05-30

【宮本佳世乃✕中嶋憲武の音楽千夜一夜】奥田民生「イージュー★ライダー」

【宮本佳世乃✕中嶋憲武の音楽千夜一夜】

奥田民生「イージュー★ライダー」


憲武●今日はゲストに宮本佳世乃さんをお迎えしています。

佳世乃●宮本佳世乃です。えーとわたしのお薦めは奥田民生の「イージュー★ライダー」です。


佳世乃●奥田民生って余裕があって、年がら年中短パンで昼酒飲んで川べりで昼寝して、たまに釣りして、という勝手なイメージ。自由に生きている感じがしてうらやましいんです。1993年にユニコーンが解散して翌年ソロになってから、余裕度が増した感じ。

憲武●奥田民生のことは実はあまりよく知らないんです。井上陽水とのコラボレーションのCDを持ってるくらい。あと、PUFFYのプロデュースなどからビートルズが好きなんだなというのは分かります。

佳世乃●そうそう、ビートルズが好きで、民生がひとりでビートルズっぽく演奏している「リー!リー!リー!」って曲なんかもあったり。

憲武●面白いですね。メンバー全員奥田民生。「リー!リー!リー!」というタイトル。特徴をよく掴んでますね。ちょっとジョン・レノンのギターの位置が低いかな?って思いますが。

佳世乃●ねー。彼はこういう遊びっぷりが絶妙なんです。それで、「イージュー★ライダー」の話に戻ると、この曲、もう20年以上前の曲なのに、今もCMに起用されたりしてて。壮年や中年から見ると、時間的展望がたっぷりあって、何にでもなれる気がした青年期を遠い目で思い出しちゃう。

憲武●サビの部分を聞いて、聞いたことあるって思いました。確かに歌詞、いいです。

佳世乃●●歌詞の話すると、もう泣けてきます。1番は「僕らの自由を 僕らの青春を」って青年時代の目線なんですが、2番になると「僕らは自由を 僕らは青春を」と、大人の目線にかわる。もうあの頃に戻れないことや、いつの時代にも感じる生きづらさをうたっているのかなぁ。

憲武●「の」と「は」の使い方で、読み方が変わってきますね。

佳世乃●この曲は音の高低差があるにはあるんですが、サビでミやド#やラ音が連続してまっすぐに歌っているので、一見簡単そうに聞こえるんです。でもカラオケで歌ってみるとそう簡単でもないというか。

憲武●なるほど。

佳世乃●民生の曲って、半音ずつの上下がふらふらしている感じがあります。音がさまよっていて、そこが魅力なんです。この曲は、歌詞に入る直前の2小節がそう。

憲武●佳世乃さんは合唱をやられているんですよね。聴き方が音楽をやられてる方の聴き方です。分析してますね。

佳世乃●この曲の気持ちよさは何か、みたいなことは考えているかも。でね、憲武さんと話すんで、「イージュー★ライダー」っていうタイトルについてもちょっと調べてみたんです。

憲武●おお、聞きたいですね。

佳世乃●映画「イージー・ライダー」は私も知っていて、単なるもじりかと思っていたんですが、イージュー(E10)って、音楽業界で30っていう意味みたいなんです。どうやら本人が30歳の時に作った曲だと。

憲武●僕も見てみたんですが、ドレミをコードで表すと3番目のミにあたるのがEで、「イー」は3、「ジュー」は10で合わせると30。三十路のバイク乗りってことですね。この曲のリリースが1996年ですから、ちょうど30歳の頃ですね。

佳世乃●この曲は、30歳の奥田民生からの、すべての年代の人たちに対する、ちょっと照れ臭い生の肯定のような気がします。生きていると、映画のようにぱっと死んじゃうこともある。そんな道のりを俯瞰で見ているような、きっとそういうことだろうと。


(最終回まで、あと805夜)

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