【空へゆく階段】№42 解題
対中いずみ
「青」360号(1984年9月号)に掲載された、飯島晴子『花木集』(および「言葉の現れるとき」)への考察である。文中の「句集のなかの一句は木や石ではないけれども一句がひとつの句集のコンテクストからはなれて置かれることもあるし枯山水のようにはなして置くことによるコンテクストもあっていい」あたりを読んでいて、裕明が句集『櫻姫譚』の命名の前に「建築と散歩」という案を考えていたことをふと思い出す。また、「言葉はありふれたものだから精神にひびかせたときにいい音がする」という科白は、前登志夫さんの書くものについても語っていたように思うが、裕明が選者として立っていた地平ももこのあたりだったかと思う。
この号には「滴り」6句を投じている。
息づかひふかく土用の波がしら
本読むにすこしさびしき滴りか
盟友に昼ね布団を用意せり
密集して走り青年等が川床へ
水打つて人形の眉人の口
曝す書のこころにかなふ端にあり
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