【週俳4月の俳句を読む】
Waiting on a Friend
曾根 毅
義士祭帰りに友の家に寄る 姫子松一樹
忠臣蔵が時代を超えて愛されるのは、義のために自己犠牲をいとわない姿や、幕府の判決に不公平感を持った赤穂藩士による自力救済の姿に心を打たれるといったところだろう。
江戸時代の人形浄瑠璃や歌舞伎では、ヒーロー的なものの見方があり、戦前になると忠義の強調があり、戦後にはそれがあまり良い意味で捉えられなくなって、吉良上野介を悪者とした復讐劇として人気を得た。
掲句は、そんな義士の思いに触れつつ、友の家に寄るという。友達の家に寄って帰るというのは、学生時代くらいのことだろうか。
例えば、友人とボランティアに参加するなど、仲間とともに何かに身をささげる気持ち。そんなところにも、忠臣蔵のメンタリティに通じるものがありそうだ。
ハンドルに脚かけて寝る花見かな 横井来季
車の運転席で、シートを後ろまで倒している姿を想像する。
ハンドルに脚をかけて、窓越しに桜を見ているのだろう。
密閉空間の中で退屈な雰囲気を纏いつつ、そんな気分を楽しんでいるように感じられる。
「花見かな」という言葉の止めが、中七との軽い切れとあいまって、気分を屈折させるのだろう。
脱力したようなニュアンスとともに、どこか突き放すような響きを感じさせる。
省略と切れ。シンプルな表現技術は、ストレートな言葉と思いを、より際立たせるものだ。
個人的には、一人旅の途中、車中泊の朝の窓越しに見た桜の景色と、その頃の気分を思い出させてくれた。
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