2021-11-06

13. 紫陽花の門 青島玄武






13. 紫陽花の門 青島玄武


薔薇どもの何処いづくへ帰り支度かな

母の日の母のわがままに付き合ふ

ほうたるの万の吐息を仰ぎ見る

梅雨に入る住宅街の駐屯地

荒梅雨やときどき壁を作る人

紫陽花の門に二人の巡査かな

葬儀屋と喪主の談笑大夕立

祭髪もう泣かぬ子となりてをり

捺印の端より滲む蝉の声

みんみんの坂みんみんを踏み締めて 

雷仰ぐ風俗街の客引きと

豆腐屋の赤子泣くなり雲の峰 

十時から十九時までの作り滝

無著より世親の少し暑さうな

油照黄泉比良坂駐車場

温泉に年寄煮ゆる山の秋 

峠まで海の匂へる良夜かな

月光を歌ふ十指の先までも

阿蘇すべて芒の下に降伏す

磐穴を神と崇むる草の花

とんばうの戸を破らんとしてゐたり

許されて金木犀の裏口へ

昼仕舞ひ秋の風鈴鳴るばかり

たそかれてなほしらしらとそばの花

紅葉散る黒式尉の目の洞へ

師走から逃げて師走の空の下

鯛焼の煮え繰り返る腸を

妹が姉を背負うて落葉道

大晦日絆創膏と過ごしけり

初晴や皺の身体の桜島

野暮用の合間に少し冷めし餅

水鳥を昨日失業した人と

虚空より摑み取つたる嚔かな

霜の朝靴の機嫌を確かめて

大寒や山へと急ぐ救急車

薄氷をやうやく出でし雲の影

他所よそ様の軒先借りて初音かな

たんぽぽやもう顔ぢうがチョコレート

貝母咲く入れぬ場所の真ん中に

世の中にしぶしぶ出づる石鹸玉

十字架の墓の周りの畑を打つ

桃の日や雀に交じる鳶の笛

花の寺虹より高くましませる

傘閉ぢて花の宴に戻りけり

花々の一から十を見てもなほ

微笑みを滴らしをり甘茶仏

藤棚の上を跨ぐや太鼓橋

夕闇に慄く気色藤の花

首のみの仏と春を惜しみけり

蝶死せり百鳥さんざめく朝に


青島玄武(あおしま・はるたけ)熊本市出身、在住。1975年(昭和50年)3月生まれ。2002年(平成14年)作句開始。2003年(平成15年)、『握手』の磯貝碧蹄館に師事。2年後に同人。邑書林刊『新撰21』に選ばれなかったほうの『新撰21』世代。現代俳句協会会員。熊本県現代俳句協会会員。2020年3月に第一句集『優しき樹』を上梓。https://www.amazon.co.jp/%E5%84%AA%E3%81%97%E3%81%8D%E6%A8%B9-%E9%9D%92%E5%B3%B6%E7%8E%84%E6%AD%A6/dp/4864388792/ref=pd_rhf_gw_p_img_3?_encoding=UTF8&psc=1&refRID=YNPRW4T4F7BFPD835XPK


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