7. 死後に聴く落語の落ち んん田ああ
心拍にシンバルを足す初日の出
梅の香の触手が髪に唇に
雪柳きれいに停まる心電図
鶯め今は黙禱してほしい
春芝を座布団とせよ世は落語
揺れているなむあみだぶと亀が鳴く
春愁が大阪的な巨看板
抱き寄せて口に含めば春の月
春風にしゃぶしゃぶされる初老肉
ワクチンで血を緑化する春の夢
去勢猫「恋は阿片だ宗教だ」
幸福な燕を餌が逃げまどう
衛星へ身をさらけだすキャベツばた
嚙みあとに続く苺の後半部
救急車静かに戻る菜種梅雨
満目の桜に脳を切り換える
桜から何て平和な機影かな
黄砂降るまだ木乃伊でもない我に
嵐山大いに笑う人の波
花屑の低空飛行蹴り進む
大量の落花ほとんど日本軍
発砲す菫の花が目障りで
チューリップばたけには無い色の空
病床に病人がこのつつじほど
花筏前哨に今オフィーリア
コンビニの使命を終えて春の闇
四月馬鹿破顔大笑するクルマ
昭和の日赤信号を燃え立たせ
気を付けて聖火見守るヒトラー忌
ウイルスも変異する世ぞメーデー歌
ころもがえアクリル板に透かし合う
葉桜を見る会ならばふだん着で
薔薇園をどろどろ歩む美女と美女
わが殺意すでにさざ波かきつばた
競泳後その腕力は抱くために
若者の汗の胸板兵士の香
ワクチンを屍に打つ夏の夢
我が影の片蔭に消え歩く死後
日本種の犬が可愛い敗戦日
屋上と虚無のあいだに天の川
天高く七十億も居る他人
いわしぐも占領ののち全滅す
虫の夜に序破急はなく虫の朝
星月夜この爆発の意図は何?
その星は鈴虫だけで住むと良い
「太陽は疲れている」と赤とんぼ
ばけもののようでたてもの秋の暮
聖夜景闇の部分が今年の喪
雪達磨春を夢見て亡くなりぬ
床の間や静かな脳と福寿草
んん田ああ(んんだ・ああ)59歳。日々と言うより時々刻々生命力が衰えていく。数年間、島村福助という歌舞伎役者みたいな名で俳句と短歌の投稿をしていたけれど、今回は変てこでアナーキーな名前に変えてみた。アナーキストならば定型詩は作らないだろうが、わたくしは奴隷の韻律に頼らざるを得ない。もっと毒性と感染力を持った株に変異したい。
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