『ゴリラ』読書会 第2回
6号から10号
十句選
●小川楓子選
全体の始終は書展巨大なギューッ 谷佳紀
一日は赤く青くそして入日の黄 久保田古丹
日暮れきゅうきゅう雑踏僕も線のかたまり 山口蛙鬼
初夏家じゅう猫はまっすぐ感じしる 山口蛙鬼
消火器の涼しさおばあさんおばあ 在気呂
リボン結びのはらからレバー色して喪 鶴巻直子
雪の下で宗教は歯を磨きをり 鶴巻直子
仔犬来てチャボが産まれたその日骨太 山口蛙鬼
がやがや沈めるひかり小壜のピクルスを 妹尾健太郎
長くあれ一日スカートくしゃくしゃの球 谷佳紀
●黒岩徳将選
霧にぶつかる白鳥でしたワインでした 毛呂篤
菖蒲をめぐる存亡も原色なんです 猪鼻治男
夕空のねむの花揺れ兄弟は 浅尾靖弘
泉こぼすのよ花こぼすのよ・天体 毛呂篤
眼下国道ぶらっと実梅みて帰途 山口蛙鬼
芋の葉をかぶって血筋濃くなる日 中北綾子
星の輪にぽとり心の直線定規 谷佳紀
花柊小切れより確かなこと 早瀬恵子
宇宙卵のこと水仙にはなすがいいか 原満三寿
星蝕や蒼い昆布に巻かれつつ 鶴巻直子
●外山一機選
兎飼いつつぬけている庭の隅 山口蛙鬼
れんげ田に戦車こげてるそこから白昼 原満三寿
石垣に朝顔の狂うこと狂うこと 猪鼻治男
風邪熱のトロリと重しコッペパン 安藤波津子
芋の葉をかぶって血筋濃くなる日 中北綾子
午后二時日暮れになって友逝けり 久保田古丹
桃畑逃げる少年たち琴に 在気呂
星触や蒼い昆布に巻かれつつ 鶴巻直子
離農家族いつも笑顔でいる菜の花 椎名弘郎
踏切に横臥の少年明日も未来 猪鼻治男
●中矢温選
横に座す人関係のない関係で 久保田古丹
巨鯨学にめざめて花子と大の字に 原満三寿
鏡の街へ遠い拳をふりおろす 猪鼻治男
ホタルホタルブラウスにまだ夫がいる 安藤波津子
朝市のみどり語から売れて 早瀬恵子
コスモスの耳ふたつ欲しいまま 早瀬恵子
キャベツ哭くよマチネーは一回 中北綾子
すずめとびたつ置き去りのひかりもとほい 在気呂
白梅焼いた溶岩なり片想いなり 谷佳紀
土葬でなく風景無色金属音 椎名弘郎
●中山奈々選
オムレツの割れ目に関東二日酔い 原満三寿
何もかも捨てていい家時計鳴る 浅尾靖弘
ある日熟して原っぱに吸われてしまった 猪鼻治男
風邪熱のトロリと重しコッペパン 安藤波津子
匙に半分に盛られた晩夏光 久保田古丹
脳みそのつれづれなるコンビーフ 早瀬恵子
薬かんの蓋ど飲む左利きの厚い土場 高桑聰
陰毛のたたまれる朝蟬強し 在気呂
舌出して春のゴキブリうろちょろするな 椎名弘郎
長くあれ一日スカートくしゃくしゃの球 谷佳紀
●三世川浩司選
馬の耳吹かれて不安な地平線 久保田古丹
あるぷすの朝の老人は陶片 毛呂篤
菜の花の遊女五人は泡でいる 毛呂篤
ふらんすのひらめいちまいは術か 毛呂篤
朝が来ているキュウリ畑の一周 山口蛙鬼
梨とナイフ無邪気であけすけ空模様 谷佳紀
全体の始終は書展巨大なギューッ 谷佳紀
日暮れきゅうきゅう雑踏僕も線のかたまり 山口蛙鬼
にわとりを鉛筆で描くちゃんとしなさい 椎名弘郎
ドラム罐に壊れた空気押し込む 椎名弘郎
●横井来季選
洗面器の嘔吐にまじるガラス戸のひびき 山口蛙鬼
れんげ田に戦車こげてるそこから白昼 原満三寿
三月が発火していて騎手とシャツ 毛呂篤
びしょぬれの綿の一日コッペパン 安藤波津子
空気ぴかぴかクレープは河馬の飢渇感 谷佳紀
紅葉を分娩し発電所は武装していた 原満三寿
冷蔵庫妻のにほひの白馬かな 在気呂
雪の下で宗教は歯を磨きおり 鶴巻直子
拡大鏡の中の砂は大古の目 久保田古丹
火口紫陽花ああ甘ったるい抜歯待ち 妹尾健太郎
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