2022-04-24

『ゴリラ』読書会 第2回 6号から10号 十句選

『ゴリラ』読書会 第2回
6号から10号
十句選

小川楓子選
全体の始終は書展巨大なギューッ  谷佳紀
一日は赤く青くそして入日の黄  久保田古丹
日暮れきゅうきゅう雑踏僕も線のかたまり  山口蛙鬼
初夏家じゅう猫はまっすぐ感じしる  山口蛙鬼
消火器の涼しさおばあさんおばあ  在気呂
リボン結びのはらからレバー色して喪  鶴巻直子
雪の下で宗教は歯を磨きをり  鶴巻直子
仔犬来てチャボが産まれたその日骨太  山口蛙鬼
がやがや沈めるひかり小壜のピクルスを  妹尾健太郎
長くあれ一日スカートくしゃくしゃの球  谷佳紀

黒岩徳将選
霧にぶつかる白鳥でしたワインでした  毛呂篤
菖蒲をめぐる存亡も原色なんです  猪鼻治男
夕空のねむの花揺れ兄弟は  浅尾靖弘
泉こぼすのよ花こぼすのよ・天体  毛呂篤
眼下国道ぶらっと実梅みて帰途  山口蛙鬼
芋の葉をかぶって血筋濃くなる日  中北綾子
星の輪にぽとり心の直線定規  谷佳紀
花柊小切れより確かなこと  早瀬恵子
宇宙卵のこと水仙にはなすがいいか  原満三寿 
星蝕や蒼い昆布に巻かれつつ  鶴巻直子

外山一機選
兎飼いつつぬけている庭の隅  山口蛙鬼
れんげ田に戦車こげてるそこから白昼  原満三寿
石垣に朝顔の狂うこと狂うこと  猪鼻治男
風邪熱のトロリと重しコッペパン  安藤波津子
芋の葉をかぶって血筋濃くなる日  中北綾子
午后二時日暮れになって友逝けり  久保田古丹
桃畑逃げる少年たち琴に  在気呂
星触や蒼い昆布に巻かれつつ  鶴巻直子
離農家族いつも笑顔でいる菜の花  椎名弘郎
踏切に横臥の少年明日も未来  猪鼻治男

中矢温選
横に座す人関係のない関係で  久保田古丹
巨鯨学にめざめて花子と大の字に  原満三寿
鏡の街へ遠い拳をふりおろす  猪鼻治男
ホタルホタルブラウスにまだ夫がいる  安藤波津子
朝市のみどり語から売れて  早瀬恵子
コスモスの耳ふたつ欲しいまま  早瀬恵子
キャベツ哭くよマチネーは一回  中北綾子
すずめとびたつ置き去りのひかりもとほい  在気呂
白梅焼いた溶岩なり片想いなり  谷佳紀
土葬でなく風景無色金属音  椎名弘郎

中山奈々選
オムレツの割れ目に関東二日酔い  原満三寿
何もかも捨てていい家時計鳴る  浅尾靖弘
ある日熟して原っぱに吸われてしまった  猪鼻治男
風邪熱のトロリと重しコッペパン  安藤波津子
匙に半分に盛られた晩夏光    久保田古丹
脳みそのつれづれなるコンビーフ  早瀬恵子
薬かんの蓋ど飲む左利きの厚い土場  高桑聰
陰毛のたたまれる朝蟬強し  在気呂
舌出して春のゴキブリうろちょろするな  椎名弘郎
長くあれ一日スカートくしゃくしゃの球  谷佳紀

三世川浩司選
馬の耳吹かれて不安な地平線  久保田古丹
あるぷすの朝の老人は陶片  毛呂篤
菜の花の遊女五人は泡でいる  毛呂篤
ふらんすのひらめいちまいは術か  毛呂篤
朝が来ているキュウリ畑の一周  山口蛙鬼
梨とナイフ無邪気であけすけ空模様  谷佳紀
全体の始終は書展巨大なギューッ  谷佳紀
日暮れきゅうきゅう雑踏僕も線のかたまり  山口蛙鬼
にわとりを鉛筆で描くちゃんとしなさい  椎名弘郎
ドラム罐に壊れた空気押し込む  椎名弘郎

横井来季選
洗面器の嘔吐にまじるガラス戸のひびき  山口蛙鬼
れんげ田に戦車こげてるそこから白昼  原満三寿
三月が発火していて騎手とシャツ  毛呂篤
びしょぬれの綿の一日コッペパン  安藤波津子
空気ぴかぴかクレープは河馬の飢渇感  谷佳紀
紅葉を分娩し発電所は武装していた  原満三寿
冷蔵庫妻のにほひの白馬かな  在気呂
雪の下で宗教は歯を磨きおり  鶴巻直子
 拡大鏡の中の砂は大古の目   久保田古丹
火口紫陽花ああ甘ったるい抜歯待ち  妹尾健太郎

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