2022-07-10

りん句る100・その2 鈴木茂雄+野間幸恵

りん句る100・その2

鈴木茂雄野間幸恵



101 立葵夕べは水のごとく来る  S

102 水面に写本をひろげ黒揚羽  N

103 引率の教師水着をはみ出して  S

104 引き際はの A 鳴らすから  N

105 雷鳴やニーチェは螺旋階段に  S

106 予め螺子のゆるんだ足三里  N

107 気象予報士甘酒のことを記す  S

108 絵日記の鯨の最後の welcome  N 

109 紅葉づれる記紀は前後ですれ違ふ  S

110 音感が外れる切り株のレトルト  N

111 ネクタイを外せば覚める国家かな  S

112 覚悟する箪笥長持残尿感  N

113 誰もゐなくて長椅子に秋の猫  S

114 退屈な2つ目の抽斗も秋  N 

115 屈んだり折れたり午後の芭蕉かな  S

116 折りたたむ母の残した未然形  N

117 偶然が助動詞 be に続きけり  S

118 ひたひたと弥勒へ続くゼロの道  N

119 ひたすら目指す2000年の地球へ  S

120 「チーズフォンデュ」は楽天を指向する  N

121 天ぷらが桃源郷に合図する  S

122 合言葉ベリーロールは永遠に  N

123 紅葉の街はかたんと CLOSED  S

124 日暮れには画像に戻る画家の RED  N

125 タイピングから想像が騒々しい  S

126 空間に手を泳がせるヴィーナス像  N

127 靴音が自分の空を探してる  S

128 覚えてる芯から眠い地図の音  N

129 目が覚めていきなり夏の雲の中  S

130 生成り着て何も足さない昼の月  N

131 切字なり季語なりおでんぐらぐらす  S

132 主語がない憂いをパッと静電気  N

133 赤のまま線路を語るたましひよ  S

134 向かいあう生命線の矛盾かな  N

135 なんでやねん月を星座に組む指向  S

136 百年の鈴すべらせて水瓶座  N

137 濃厚な瓶がぶらんと魚座の木  S

138 ブランコで探す水平線の嘘  N

139 曼殊沙華日付変更線装置  S

140 ここそこにそこに在ること置き薬  N

141 毒薬の棚に息づく独り言  S

142 バスキアの時間の棚に濡れタオル  N

143 バスタブの栓のごとくに文字抜ける  S

144 さえずりに踊るアラビア数字かな  N

145 長き夜のローマ数字をコピペする  S

146 長短の鳥壊しつゝボート漕ぐ  N 

147 数式の青きところに小鳥くる  S 

148 セザンヌは青い小瓶に潜んでる  N

149 月光の裏にひそみし黒子かな  S 

150 千年の裏木戸くぐり水くぐり  N

151 樹の中の水へつらぬくインビジブル  S

152 白猫を秋の背中に印字する  N

153 おつとりが来て白桃を箱買ひす  S

154 歳月は白湯のようなる文脈で  N

155 文字鎖すうつと冬が立ち上がる  S

156 十字路や鏡の国で舐める塩  N

157 たのもしき塩壺がある真夏かな  S

158 ずぶ濡れの空に絡まる神頼み  N

159「み」は「美」なり流れやすきもの草書体  S

160 きもの着る客観的に題詠で  N

161 向日葵は抽象的に枯れにけり  S

162 夕暮れの百分率へ象の群れ  N

163 暮れなづむ言葉の列にまぎれこむ  S

164 言うまでもないが漢字のねずみです  N

165 「です」に「DEATH」使ふ少年ふりかへる  S

166 ヌードなら果実の名前使用中  N

167 夏果ての男の白い土踏まず  S

168 宵の口整え舞踏会場へ  N

169 宵闇に迫られてゐる切羽かな  S

170 踏み切って耽美な秋のかかとかな  N

171 O嬢といふ秋めいてゐる挿絵  S

172 浮世絵の晴れ晴れと耳澄ましけり  N

173 遠くより玻璃の音して水が澄む  S

174 瑠璃・玻璃も円周率に届かない  N

175 二人とは虹の出生届かな  S

176 煙る日を生命線の片隅で  N

177 片頭痛赤い棒線グラフより  S

178 こきざみに深夜を埋める赤ワイン  N

179 シリアスに要約すると夜の蜘蛛  S

180 音速の約束三角四角かな  N

181 足音はいつも背後に秋の風  S

182 打楽器に午後の3時を教えたい  N

183 教会に忘れてきたるサングラス  S

184 転調のあとはブルーな勿忘草  N

185 やまびこがまた草の穂を飛ばしけり  S

186 濡れながら野山を越えるマイバッハ  N

187 山道をしたゝるものが憑いてくる  S

188 くるくるとチャーリーブラウンの家出  N

189 海の家きらめくたびに消えてゆく  S

190 めくるめくカーテンコール間欠泉  N

191 欠伸して淵へ淵へと昼寝かな  S

192 うたた寝にいつかのかもめ満ちてくる  N

193 満月の家系毛深きことをする  S 

194 完全な静寂のことメトロノーム  N

195 ヒロシマは NO WAR というプラカード  S

196 ちりぬるをドレスで決める YES・NO  N

197 非常口まで決決とさかなして  S

198 小夜曲に更けゆく水のかたさかな  N

199 あかさたなはまやら和音さぐる水  S

200 美しい手探りミクロな鳥が棲む  N

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