りん句る100・その2
鈴木茂雄+野間幸恵
101 立葵夕べは水のごとく来る S
102 水面に写本をひろげ黒揚羽 N
103 引率の教師水着をはみ出して S
104 引き際は♥の A 鳴らすから N
105 雷鳴やニーチェは螺旋階段に S
106 予め螺子のゆるんだ足三里 N
107 気象予報士甘酒のことを記す S
108 絵日記の鯨の最後の welcome N
109 紅葉づれる記紀は前後ですれ違ふ S
110 音感が外れる切り株のレトルト N
111 ネクタイを外せば覚める国家かな S
112 覚悟する箪笥長持残尿感 N
113 誰もゐなくて長椅子に秋の猫 S
114 退屈な2つ目の抽斗も秋 N
115 屈んだり折れたり午後の芭蕉かな S
116 折りたたむ母の残した未然形 N
117 偶然が助動詞 be に続きけり S
118 ひたひたと弥勒へ続くゼロの道 N
119 ひたすら目指す2000年の地球へ S
120 「チーズフォンデュ」は楽天を指向する N
121 天ぷらが桃源郷に合図する S
122 合言葉ベリーロールは永遠に N
123 紅葉の街はかたんと CLOSED S
124 日暮れには画像に戻る画家の RED N
125 タイピングから想像が騒々しい S
126 空間に手を泳がせるヴィーナス像 N
127 靴音が自分の空を探してる S
128 覚えてる芯から眠い地図の音 N
129 目が覚めていきなり夏の雲の中 S
130 生成り着て何も足さない昼の月 N
131 切字なり季語なりおでんぐらぐらす S
132 主語がない憂いをパッと静電気 N
133 赤のまま線路を語るたましひよ S
134 向かいあう生命線の矛盾かな N
135 なんでやねん月を星座に組む指向 S
136 百年の鈴すべらせて水瓶座 N
137 濃厚な瓶がぶらんと魚座の木 S
138 ブランコで探す水平線の嘘 N
139 曼殊沙華日付変更線装置 S
140 ここそこにそこに在ること置き薬 N
141 毒薬の棚に息づく独り言 S
142 バスキアの時間の棚に濡れタオル N
143 バスタブの栓のごとくに文字抜ける S
144 さえずりに踊るアラビア数字かな N
145 長き夜のローマ数字をコピペする S
146 長短の鳥壊しつゝボート漕ぐ N
147 数式の青きところに小鳥くる S
148 セザンヌは青い小瓶に潜んでる N
149 月光の裏にひそみし黒子かな S
150 千年の裏木戸くぐり水くぐり N
151 樹の中の水へつらぬくインビジブル S
152 白猫を秋の背中に印字する N
153 おつとりが来て白桃を箱買ひす S
154 歳月は白湯のようなる文脈で N
155 文字鎖すうつと冬が立ち上がる S
156 十字路や鏡の国で舐める塩 N
157 たのもしき塩壺がある真夏かな S
158 ずぶ濡れの空に絡まる神頼み N
159「み」は「美」なり流れやすきもの草書体 S
160 きもの着る客観的に題詠で N
161 向日葵は抽象的に枯れにけり S
162 夕暮れの百分率へ象の群れ N
163 暮れなづむ言葉の列にまぎれこむ S
164 言うまでもないが漢字のねずみです N
165 「です」に「DEATH」使ふ少年ふりかへる S
166 ヌードなら果実の名前使用中 N
167 夏果ての男の白い土踏まず S
168 宵の口整え舞踏会場へ N
169 宵闇に迫られてゐる切羽かな S
170 踏み切って耽美な秋のかかとかな N
171 O嬢といふ秋めいてゐる挿絵 S
172 浮世絵の晴れ晴れと耳澄ましけり N
173 遠くより玻璃の音して水が澄む S
174 瑠璃・玻璃も円周率に届かない N
175 二人とは虹の出生届かな S
176 煙る日を生命線の片隅で N
177 片頭痛赤い棒線グラフより S
178 こきざみに深夜を埋める赤ワイン N
179 シリアスに要約すると夜の蜘蛛 S
180 音速の約束三角四角かな N
181 足音はいつも背後に秋の風 S
182 打楽器に午後の3時を教えたい N
183 教会に忘れてきたるサングラス S
184 転調のあとはブルーな勿忘草 N
185 やまびこがまた草の穂を飛ばしけり S
186 濡れながら野山を越えるマイバッハ N
187 山道をしたゝるものが憑いてくる S
188 くるくるとチャーリーブラウンの家出 N
189 海の家きらめくたびに消えてゆく S
190 めくるめくカーテンコール間欠泉 N
191 欠伸して淵へ淵へと昼寝かな S
192 うたた寝にいつかのかもめ満ちてくる N
193 満月の家系毛深きことをする S
194 完全な静寂のことメトロノーム N
195 ヒロシマは NO WAR というプラカード S
196 ちりぬるをドレスで決める YES・NO N
197 非常口まで決決とさかなして S
198 小夜曲に更けゆく水のかたさかな N
199 あかさたなはまやら和音さぐる水 S
200 美しい手探りミクロな鳥が棲む N
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