2022-09-24

【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】ステイプル・シンガーズ「I'll Take You There」

【中嶋憲武✕西原天気の音楽千夜一夜】
ステイプル・シンガーズ「I'll Take You There」


天気●いよいよ涼しく、というか、秋らしい気温になってきましたね。ここらで熱唱系のソウルをひとつ。ステイプル・シンガーズ「I'll Take You There」(1972年)です。

 

天気●父親(ローバック・ステイプルズ)と娘3人のグループ。なんといっても、メイヴィス・ステイプルズのゴスペル寄りのソウルフルな歌唱が圧倒的です。

憲武●高校から大学にかけて、友達の影響もあってソウルを聴くようになったんですけど、このステイプル・シンガーズ、ザ・バンドの「ラストワルツ」という映画の中で初めて知りました。

天気●「The Weight」。名演ですよね。この「I'll Take You There」、マッスル・ショールズ・スタジオでの録音。バッキングのマッスル・ショールズ・リズムセクション、このリズムセクションが昔から大好きなんですが、その演奏が愉しめるという意味でも素晴らしいテイク。これはもう個人的な趣味嗜好なんですが、タイトなドラム、ベースのおおむねボトム(低音)を支えながら、ここぞというときの甘いハイノート(1分50秒あたりから)、カリッと硬質かつジューシーなギター、ピアノのメロウな音(おそらくフェンダー・ローズ)などなど、ほんと美味しい。

憲武●演奏がのっけから、何でこんなにタイトなんでしょうね。グッと引き込まれてしまいます。

天気●2コードのシンプルな進行が、ライブ感重視の歌唱に向いています。途中、「ピアノ、弾いて、弾いて」といった掛け合いも愉しい。

憲武●はい、そこもいいです。父親のローバックは、2000年に亡くなってるんですね。知りませんでした。

天気●メイヴィス・ステイプルズは今も健在で現役のようです。2021年のライブでこの曲を演ってるのがあります。ルックスはかなりの経年変化で、声もすこし衰えていますが、基本的な熱量や説得力(歌唱の雄弁性)は衰えない。それなりに経年の味です。


(最終回まで、あと742夜)

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